pk21826PAR513761881_TP_V

山を歩いていると、急に便意に襲われた。
それ以上歩くことも適わず、仕方なく道傍の藪で用を足すことにする。
思いを遂げ、しゃがんだまま一息ついたその直後。

ガサリ、と目の前で音がした。
慌てて顔を上げた彼の前には、大きな一頭の奇妙な猪がいた。
身体中が黒と灰色の斑毛で覆われている。
おかしいのはその顔だった。
ピンクの鼻の直ぐ後ろから、何本もの白い角が額に向けて伸びていた。
角の付け根からは、黒い粘液がグチグチと流れている様子。血だろうか?

しばし無言で睨み合う。
と、猪が口を半開きにした時、全ての角の根が口の中に繋がっているのが見えた。
・・・あれは角ではない。
下顎の長い牙が、上顎の肉を突き破って、更に伸び上がっているのだ。

「そんなんで飯食えるのか?」
身動きできない自分の体勢も忘れて、思わず猪に話し掛けた。
猪は「詰まらないことを聞く」とでもいうように鼻をフンと鳴らし、木々の間に消えて
いったという。