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彼の家の裏山には、既に使われなくなった火葬場跡がある。
祖父から聞いたところ、ちょっと奇妙な所だったのだそうだ。

人を焼いた煙が上り始めると、小屋の天井で声がしたのだという。

 くしゃんっ!

まるで幼子がクシャミをしたような声だったらしい。
見上げても低い天井には誰がいる筈もない。薄い屋根に上るなど論外。
焼き場の担当は慣れたもので、まったく無視していたと聞く。

「でもなぁ、偶にクシャミじゃない時もあったんだ。
 うえぇううえぇっ・・・ってな感じでな、歪んだ笑い声のようだったわ」

故人が強欲な性質だった場合、クシャミではなくてあの嫌な笑いが聞こえる
のだと、焼き場守の間では囁かれていた。
怖いといえば怖かったが、仏さんの生前が類推できるような、ちょっと暗い
楽しみがあったとお祖父さんは言っていた。

現在、そこには基礎石が雨曝しになっているだけだ。
声の主がどこへ行ったのか、お祖父さんにもわからない。