22 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/06/07(月) 23:57:09 ID:5wEx2dIH0 [4/5回(PC)]
"アレ"がとうとうキレた。
「ガ…マンデ…キマセン…カオタベ…マス…カカカカカカオオオオタタタタタタタタベ…マススススス」
よっぽど旨そうだったのだろう。今までに無い物凄い勢いで黒い腕が球体に迫る。
その瞬間だった。
「駄目だって言ってるやろぉぉぉぅぅぅぅうううがぁあぁああぁあああああああ!!!!」
Iちゃんがいきなり般若のような形相になり、首が伸び、黒い手に噛み付いた。
「まじぃいぃいぃいいぃいんじゃぐらぁあぁあああ!!!うううぅううううげぇぇぇぇぇ!!!!!」
薬指と小指を噛み千切り、線路の近くの林に吐き捨てる。
それに当たった何本かの常葉樹がジュジュジュと嫌な音を立てて黒くなり、溶けていく。
Iちゃんも青筋を立て口から酸が溶けたような泡を吹き、黄色い液体を垂らしている。
十秒ほど睨みあった二体の化け物だったが
どうやら"アレ"の方が気迫負けしたらしく、伸ばしていた手を
シュルシュルと師匠の肩付近まで戻してから、沈黙した。
それを受けて、Iちゃんも首の長さを元に戻した。
俺は呆気に取られて、何がなんだか分からなかった。
「………」
元の表情に戻ったIちゃんが俺に向けて静かに口を開く。
「というわけだから、そいつをここに近づけないでね。困るから」
「……分かった。でも一般人に変なことしたら祓うからね(おかんが……いや、おかんでも…)」
Iちゃんはフッと少しだけ、寂しそうに笑うと、ズブズブと"球体"の中に引っ込んでいった。
俺はなんとか精一杯の強がりをしつつ、"アレ"が出っ放しの師匠を肩に背負って立ち去った。
帰り道、相当機嫌が悪かったらしいアレは
自販機の裏に潜む弱弱しい自爆霊やら何やらを、
俺に担がれたまま、長い腕を伸ばして手当たり次第喰いまくっていた。
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