28 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/01/31(日) 00:02:26 ID:vtu/WEn6i [1/2回(iPhone-SB)]
その仏壇は部屋の中央、入り口正面の壁際にあった。
衣装ダンスを二周りほど大きくしたその黒い箱の両脇には、デスクが二つ箱に向けて置かれていた。
これらは総務1課長、2課長の席である。
彼らの部下達は、仏壇に向けて机を並べていた。つまり課長席とは90度向きが異なる。そして1課、2課の間は通路になっているため、部屋を開けるとまっすぐに仏壇を見据えることになる。あるいは見据えられることになる。
仏壇は格別に色の濃い黒檀で、表面に精巧な彫り物が施されているが、金具は取っ手と蝶番以外何もなく。全くの黒一色である。
そしてその扉は閉ざされている。常に閉ざされている。
この部屋の部署に配属された者は最初にこう言われる。
「決して触れるな。決して聞くな。決して語るな」
こうしてこの部屋には線香も花も供えられない仏壇があるのだった。
島崎も異動するなりそう言われ、最初こそ面食らったものの、慣れてしまえばどうということもなかった。課長の席の向きが変だが、課長に書類を見せている間にこの課で一番かわいい(だから一番前の席なんだろう、課長め)三波さんが隣に見れてかえっていいくらいだ。
雑務に追われ、たまには同僚と飲んで、ごくごくたまには合コンもして、そして最後には寂しく一人ワンルームマンションに帰る日々だった。
雑務と言いながら時には至急に対処しなければならない仕事もあり、そういう仕事が溜まって残業になることもある。
「お先、明日までな」と課長に言われて、島崎がひとりぼっちになったのは9時を回ったころだった。
「これ、徹夜じゃねぇの」
他人事みたいに言ってみて、却ってひとりげんなりする。そんなのやってられない。
(続く)
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