806 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2009/08/04(火) 19:42:15 ID:hzYKyVNt0 [1/2回(PC)]
友人の話。
夜遅くに峠道を、自転車で帰宅している途中のこと。
無灯火の黒い自転車と擦れ違った。
小太りの男性が乗っていたなと思ったくらいで、気にも留めなかった。
少し経ってから、背後からベルの音が聞こえた。
振り向くと月明かりの下、無灯火の自転車が後を着いてくる。
「えっ、さっきの小父さん?」
通い慣れた峠道だが、この時間では他に通行者などいない。
女一人で走っていることが急に怖くなって、力一杯にペダルを漕いだ。
後ろの自転車は、着かず離れずの距離を保ちながら、しかし確実に着いてくる。
時折、耳障りなベルの音を響かせながら。
まこうとして、普段は通らない細い小路や、とても登る気にならない急な登りに
走り込んでみたが、しばらくすると、後ろからリンリンと鳴る音が近付いてくる。
峠を下って自宅の門の中に滑り込んだ時には、安堵で思わず涙ぐんだという。
外の通りを見ると、つい先まで背後にいた筈の自転車は、影も形も見えなかった。
「自分の気のせいだったかな?」
冷静になってみると、そんな気にもなってきた。
家族は既に眠っていたので、起こさないようにしながらお風呂に入る。
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