オカルト遅報

速報では無いけれど、オカルトな話題毎日更新中!

    怖い話

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    416 : 保育園後編[sage] 投稿日:2012/06/16(土) 19:46:23.47 ID:a0GyUdbC0 [6/30回(PC)]
    きっかけはその事件の数日前だった。 
    園児たちがみんな帰宅し、他の先生たちも順次帰っていった後、由衣先生は一人で園に残って、書きかけの書類を仕上げていた。七時を過ぎ、その残業にもようやく目処がついたころ、ふいに来客があった。 
    スーツを着て、立派な身なりをしていたので、保護者が忘れ物でも取りに来たのかも知れないと思い、門のところまで出て行くと、その男性は頭を下げながら『沼田ちかの父です』と言うのだ。 
    沼田ちか。 
    その時初めて不審な思いが湧いた。 
    とっさにそんな子はうちにはいませんが、と口にしそうになった瞬間、その名前とそれにまつわる事件のことを思い出した。 
    数年前、この保育園に通っていた沼田ちかちゃんという女の子がいたことを。 
    片親だったその子は他の子と家庭環境が違うことを敏感に感じ取り、園でもあまりなじめなかったそうだ。


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    349 : 保育園 中編[sage] 投稿日:2012/06/08(金) 21:15:33.85 ID:WMI9l70o0 [20/23回(PC)]
    「おい、タオルを借りて来い」 
    師匠から僕に指示が飛ぶ。 
    「緑色のですか、青色のですか」 
    そう確認すると、「何色でもいい」という答え。その瞬間、僕は師匠がなにか掴んだということを感じた。 
    僕はすぐさま五歳児室に戻り、先生たちにタオルを貸して欲しいと頼む。 
    「これでいいですか」 
    悦子先生から渡された白いタオルを手に園庭へとって返すと、そのまま「あの木の枝に引っかけてこい」と言われる。 
    ちょうど五歳児室の正面の木だ。 
    僕は木の下に立つと、登れそうにないことを見て取り、タオルを丸めて幹に近い枝をめがけて投げつけた。 
    最初はそのまま落ちて来たが、何度か繰り返すと上手い具合に引っかかってくれた。 
    「これでいいですか」 
    と振り返ると、師匠が親指で園舎をさしながら頷いている。 
    二人して五歳児室に戻り、四人の保育士たちが見守る中でフローリングの床に腰を下ろした。 
    「さて」 
    視線を集めながら師匠が落ち着き払った態度でそう切り出す。


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    339 : 保育園 中編[sage] 投稿日:2012/06/08(金) 20:27:26.26 ID:WMI9l70o0 [10/23回(PC)]
    「事務室の戸は開けっ放しです。しかも園長先生の机がすぐ横にあるから、子どもが廊下を通り過ぎようとしたら絶対に気づきます。 
    昼寝の時間に外へ出ようとしたら、凄く怒られるので、子どもたちはみんな園長先生を怖がってます」 
    「分かりました。念のために訊きますが、その日、園長先生は誰も外へ出てないと言ってるんですね」 
    「はい」 
    なるほど。先生たちの間でも子どものイタズラの可能性は一応検討されたのか。しかしそれも園長の証言で否定された。 
    「一階の子どもたちはそれでいいでしょう。でも二階の子どもたちはどうです。 
    この園舎の構造上、二階の階段から降りてくれば、事務室の前を通らずにそのまま玄関から外へ出られるのではないですか」 
    「二階の子は、一番上でも二歳児ですよ。その日の午前中も外ヘは出していません。 
    一人で出て行くなんて…… 第一、外へ出ても二歳児にあんなもの描けるもんですか」 
    悦子先生の言葉に、僕もハッとした。 
    そうだ。魔方陣なのだ。 
    二歳児が五歳児だろうと、そもそもそんなものを子どもが描けるものだろうか。 
    思わずもう一度くだんの写真を覗き込む。


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    329 : 保育園 中編[sage] 投稿日:2012/06/08(金) 19:49:20.44 ID:WMI9l70o0 [1/23回(PC)]
    「方法はともかく、誰がやったかということです。この中に犯人を知っている、という人は?」 
    反応がない。あたりまえか。 
    「では、まず考えるべきは部外者でしょう。この保育園の敷地の出入り口は、あっちの正門だけですね」 
    角度的に今いる場所からは見えないが、師匠は右手方向を指さす。 
    「そうです」 
    「普段は開けておくのですか」 
    「送迎の時間帯以外はほとんど開けません。それ以外の時間だと、出入りの業者さんが来た時とか……」 
    「その雨が降っていた時間帯も閉めていたと」 
    「はい」 
    「でも外からも開けられるんでしょう」 
    さっき来る時に、門の構造を見てきたのだ。 
    二メートル少々の長さの、下部についた滑車でスライドさせるレール式門扉であり、重そうではあったが、つっかえ棒になるバーをずらしただけで鍵をかける単純な仕組みになっていた。 
    外からでも手を伸ばしてさし入れれば、バーは操作できる。 
    「でも、門を動かせば凄い音がします」 
    かなり錆びてますから。

     
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    257 : 保育園 前編[sage] 投稿日:2012/05/20(日) 16:26:02.38 ID:cMOGa5XM0 [20/29回(PC)]
    先週の金曜のことだった。 
    その日は朝から曇りがちで、天気予報でも降水確率は50%となっていた。 
    空が暗いと気分も暗くなる。悦子先生は園庭で遊ぶ子どもたちを見ながら、ここ最近続く気持ちの悪い出来事のことを考えていた。 
    一階や二階のトイレでなにか人ではないものの気配を感じることがたびたびあった。 
    他にも花壇やプール、時には室内でさえ何か人影のようなものを見ることもあった。先輩から聞いた噂によると、この保育園の敷地は元々、罪人の首をさらす場所だったとか…… 
    悦子先生だけではなく、他の先生や、子どもたちまでも何か幽霊じみたもののを見てしまう、ということがあった。少なくともそんな噂がまことしやかに囁かれている。 
    お祓いをしてもらった方がいいんじゃないか。 
    先生の間からそんな意見も出たが、園長先生はとりあってくれなかった。 
    馬鹿らしい。子どもに悪影響が出る。 
    そんな言葉で却下された。 
    『だいたいねえ、うちは公立なんだから、そんなお祓いなんていう宗教的なものに予算がつくはずないでしょう?』 
    そんなことを言われたので、悦子先生は市の保育担当職員にこっそりと訊いてみたが、やはりそういう支出はできないのだそうだ。


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    246 : 保育園 前編[sage] 投稿日:2012/05/20(日) 16:12:00.11 ID:cMOGa5XM0 [9/29回(PC)]
    メモ帳にはキノコのようなものが小さく描かれ、それがゴチャゴチャした線で消されていた。 
    「これもだ」 
    何頁かメモを捲り、またぐいと開かれる。 
    オカッパのような髪型の誰かの顔が描かれているが、失敗したのか途中で線が途切れている。 
    「そしてこれ」 
    ドキリとした。 
    別の頁に、さっきとはまるで違う筆致で頭のようなものが描かれている。 
    オカッパ頭が。 
    顔は描かれていない。頭の外殻だけの絵。 
    「お……女の子」 
    「そうだ」 
    師匠はニヤリと笑う。 
    僕は思わずメモ帳を受け取り、さっきのキノコのようなものの絵を見る。 
    髪だ。 
    あらためて確認するとキノコではなく明らかに髪の毛として描かれていた。 
    ドキドキしながら頁を捲っていくと、他にもそのオカッパのような髪型がいくつか現れた。 
    偶然。


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    238 : 保育園 前編[sage] 投稿日:2012/05/20(日) 16:05:37.87 ID:cMOGa5XM0 [1/29回(PC)]
    師匠から聞いた話だ。 



    土曜日の昼ひなか、僕は繁華街の一角にある公衆電話ボックスの扉を開け、中に入った。 
    中折れ式のドアが閉まる時の、皮膚で感じる気圧の変化。それと同時に雑踏のざわざわとした喧騒がふいに遮断され、強制的にどこか孤独な気分にさせられる。 
    一人でいることの、そこはかとない不安。 
    まして、今自分が密かな心霊スポットと噂される電話ボックスにいるのだという意識が、そのなんとも言えない不安を増幅させる。 
    夜の暗闇の中の方がもちろん怖いだろうが、この昼間の密閉空間も十分に気持ち悪い。僕は与えられた使命を果たすべく、緑色の公衆電話の脇に据え付けてあるメモ帳に目をやる。 
    メモ帳は肩の部分に穴があけられていて、そこに通した紐で公衆電話の下部にある金具に結び付けられている。

     
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    227 : 風の行方 後編  ◆oJUBn2VTGE [ウニ 最近あたりさわりのないことをいう偽物がいましたね・・・] 投稿日:2012/05/19(土) 23:23:36.85 ID:13YZ4scB0 [3/9回(PC)]
    ガキのくせに。 
    師匠はそう呟いて、シャツの裾をくるくると巻いてわき腹でくくり、僕の肩に手を置いた。「さあ急ぐぞ。日が暮れる」 
    そう急かされたが、僕には師匠のへそのあたりが気になって仕方がなかった。 
    その後、さっきの二人が追いかけてくる様子もなく、また街なかをくるくると自転車で回り続けた。確かに同じ場所は通らなかったが、風の道が本当に一本なのか不安になってきた。 
    道がどこかでつながっていたとしたら、尻尾を飲み込んだウロボロスの蛇のように堂々巡りを繰り返すだけだ。 
    そして、あるビルの真下にやってきたとき、師匠は忌々しげに「くそっ」と掃き捨てた。 
    ビルを見上げると、十階建てほどの威容がそそり立っている。風は垂直に昇っていた。ビルの壁に沿って真上に。 
    これでは先に進めない。 
    ひたすらペダルをこぎ続けた疲れがドッと出て、僕は深く息を吐いた。目を凝らしても壁に沿って上昇した後の風の流れは見えなかった。 
    しかし師匠は「ちょっと、待ってろ」と言って近くのおもちゃ屋に飛び込んで行った。 
    そして出てきたときには手に風船のついた紐を持っていた。ふわふわと風船は浮かんでいる。ヘリウムが入っているのだろう。 
    「見てろよ」 
    師匠は一際大きく吹いた風に合わせて、紐を離した。 
    風船はあっと言う間に風に乗って上昇し、ビルの壁に沿って走った。そして五階の窓のあたりで大きく右に曲がり、そのままビルの壁面を抜けた。壁の向こう側へ回りこんだようだ。 
    僕と師匠はそれを見上げながら走って追いかけ、風船の行く先を見逃すまいと息を飲んだ。 
    だが、風船はビルの壁の端を回りこんだあたりで、風のチューブに吸い込まれるような鋭い動きを止め、あとはふわふわと自分自身の軽さに身を任せたかのようにゆっくりと空に上昇していった。 
    「しまった」 
    師匠はくやしそうに指を鳴らす。 
    そうか。風が上昇するときは、風船もその空気の流れに沿って上昇していくが、下降を始めたら、風船はその軽さから下向きの空気の流れに抗い、一瞬は風とともに下降してもやがてその流れから外れて、勝手に上昇していってしまうのだ。恐らくは何度やっても同じことだろう。 
    飛んで行く風船を見上げながら、僕たちはその場に立ち尽くしていた。これで道を指し示すものがなくなった。 
    気がつくとあたりは日が落ちかけ、薄暗くなっていた。


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    192 : 風の行方 前編  ◆oJUBn2VTGE [ウニ] 投稿日:2012/05/11(金) 21:28:18.48 ID:wBpB+Oun0 [9/14回(PC)]
    しばらく待っていると、浮かない顔をして戻ってきた。 
    「どうでしたか」と訊くと 
    「駄目だ。こっちに住民票自体移してなかった。蒸発の仕方から、転出届けは出してない可能性が高かったから、住んでたアパートの住民票さえ取れれば、戸籍と前住所が分かって、色々やりようがあったんだけど」 
    師匠はそう言いながら市役所の外へ歩き出す。 
    「大家をつかまえて、アパートに越してくる前の住所を訊き出しますか」 
    「いや、難しいだろう。住民票を市内に移してないということは、遠方の実家に住所を置いたままだった可能性が高い。カンだけど、曽我はまだこの街にいる気がする。 
    だから実家を探し出してもやつの足取りをたどれるかどうかは怪しいな。ま、逆に実家に帰ってるんだったら、実害はなさそうだ。とりあえず今すべきことは、最悪の事態を想定して、迅速に動くことだな」 
    となると、やっぱり大学と演劇部の連中に訊き込みをするしかないか。 
    師匠は忌々しそうに呟いた。 
    もし曽我がまだその近辺にいるのなら、それではこちらの動きも筒抜けになってしまう可能性があった。 
    「どうすっかなあ」 
    師匠は大げさに頭を両手で掻きながら歩く。 
    クーラーの効いていた市役所の中から出ると、熱気が全身に覆いかぶさってきて、息が詰まるようだった。そして太陽光線が容赦なく肌を刺す。 
    しかし、しばらく歩いていると、強い風が吹き付けてきてその熱気が少し散らされた。相変わらず風が強い。朝からずっと吹き回っている。 
    「昨日からだよ」 
    と師匠は言った。風は昨日から吹いているらしい。そう言えば昨日はほとんど寝て過ごしたので覚えていないが、そうだったかも知れない。 
    「そう言えば昨日、友だちが髪の毛の話をしてましたよ」 
    僕には、男のくせにやたらと髪の毛を伸ばしている友人がいた。高校時代からずっと伸ばしているというその髪は腰に届くほどもあって、周囲の女性からは気持ち悪がられていた。 
    本人は女性以上に髪には気を使っているのだが、長いというだけで不潔そうに見えるのだろう。だが大学にはそういう髪の長い男は結構多かった。いわゆるオタクのファッションの一類型だったのだろう。


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    183 : 風の行方  ◆oJUBn2VTGE [ウニ] 投稿日:2012/05/11(金) 21:09:55.96 ID:wBpB+Oun0 [1/14回(PC)]
    師匠から聞いた話だ。 


    大学二回生の夏。風の強い日のことだった。 
    家にいる時から窓ガラスがしきりにガタガタと揺れていて、嵐にでもなるのかと何度も外を見たが、空は晴れていた。変な天気だな。そう思いながら過ごしていると、加奈子さんという大学の先輩に電話で呼び出された。 
    家の外に出たときも顔に強い風が吹き付けてきて、自転車に乗って街を走っている間中、ビュウビュウという音が耳をなぶった。 
    街を歩く女性たちのスカートがめくれそうになり、それをきゃあきゃあ言いながら両手で押さえている様子は眼福であったが、地面の上の埃だかなんだかが舞い上がり顔に吹き付けてくるのには閉口した。 
    うっぷ、と息が詰まる。 
    風向きも、あっちから吹いたり、こっちから吹いたりと、全く定まらない。台風でも近づいてきているのだろうか。しかし新聞では見た覚えがない。天気予報でもそんなことは言っていなかったように思うが…… 
    そんなことを考えていると、いつの間にか目的の場所にたどり着いていた。 
    住宅街の中の小さな公園に古びたベンチが据えられていて、そこにツバの長いキャップを目深に被った女性が片膝を立てて腰掛けていた。 
    手にした文庫本を読んでいる。その広げたページが風に煽られて、舌打ちをしながら指で押さえている。 
    「お、来たな」 
    僕に気がついて加奈子さんは顔を上げた。Tシャツに、薄手のジャケット。そしてホットパンツという涼しげないでたちだった。 
    「じゃあ、行こうか」 
    薄い文庫本をホットパンツのお尻のポケットにねじ込んで立ち上がる。 
    彼女は僕のオカルト道の師匠だった。そして小川調査事務所という興信所で、『オバケ』専門の依頼を受けるバイトをしている。 
    今日はその依頼主の所へ行って話を聞いてくるのだという。 
    僕もその下請けの下請けのような仕事ばかりしている零細興信所の、アルバイト調査員である師匠の、さらにその下についた助手という、素晴らしい肩書きを持っている。 
    あまり役に立った覚えはないが、それでもスズメの涙ほどのバイト代は貰っている。

     

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