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山裾で土木工事に従事していた時のこと。
現場に入る前、監督員におかしなことを言われたのだという。

「山から小僧が降りてきたら、その日はもう帰れ」
小僧とは何かと聞くと、見れば分かるとだけ答えられた。
そんなことより、帰る時にはどんなに慌てていても、機械の管理を忘れないよう
にと念を押して注意された。
何なんだろうとは思ったが、深く考えずに了承したのだという。

彼はその現場が終わるまでに、結局2回小僧を目にしたそうだ。
その時になって、初めて監督員の言葉が理解でき、慌てて撤収したのだと。
「小僧って何だったんだ?」という私の問いには答えず、彼はこう繰り返すのみ。

「洒落にならねえ。真っ赤でグズグズなんだよ。ブラブラだし」

とにかく精神衛生上、まったく良くないものだったらしい。
以来、彼は現場に入る時は、前任の人によく話を聞くようになったという。