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相良町萩間にある大興寺の裏山、西から東に流れる谷川にでると、谷川の中ほどの右岸、高い崖に、丸い石が出てくる。

初めは、小さなこぶの様な頭が出てきて、年とともに、だんだん大きくなり(全体が現れてきて)やがて、ついに川底に落ちる。
この丸い石が、頭を出し転げ落ちる様子が、人間の子供が、生まれてくるのと似ているので”大興寺の子生まれ石”と呼ばれている。

石の形は、”まゆ形”だがなかには”ひさご形”の石もあり、大きさは五,六十センチ前後で、それよりも大きな石もある。

石はどこにでも見られる自然石だが、不思議なのは大興寺の住職が死ぬ頃になるとこの石が、目に見えて崖から落ちる速度が速くなり
(全体を現してくる速度が)川底に落ちると同時に、必ず住職さんが死ぬので、その石を拾って、住職さんのお墓を立ててきた。
数百年の昔から大興寺の住職さんのお墓は、この石を墓石としてきた。

お寺の西の山には、もう二十八もの石塔が並んでいる。
それで近隣の人達は、崖にこの丸い石が顔をだしかけると、いつも「今の和尚様ももうじき死ぬぞ」と噂をするのだ。

ある時ある和尚は、その石が見えてきたのを苦にして「死ぬのは嫌だ。あんな石さえなければ」とある夜、そっとその石を抜いて遠くの山へ捨ててきた。
するとどうだろう。石は不思議なことにその夜のうちに元の場所に戻っていた。しかし、一度抜き取った石はほどなく谷川に落ちて、和尚さんは急に死んでしまい、その石を墓石にしたそうな。

またある時の事、その時の和尚様は、五十なかばでまだ死ぬのは、早すぎると思っているのに重い病気になり、命尽きるのは今日か明日かという重態になった。
近隣の人達や弟子のお坊さん達は、皆が和尚さんの枕元に集まって看病していた。

するとその時お寺の小僧さんの一人が、「そうだ、石が出たか見てきてやれ」と谷川に走っていった。
小僧が見ると石が落ちかけていた。「おっ出ているぞ」と小僧は飛んで帰り病気の和尚様の枕元にすわると、大声で
「和尚様、大変ですよ.。石がもうじき落ちそうになってますよ。」すると、和尚はにっこりして言った。

「そうか。お前にやろう」「えっ~」小僧は、嫌な顔をして、次の言葉がでなかった。
ところがそれから和尚様の病気は、だんだんと良くなりやがて全快してしまった。
しかし小僧は日に日にやつれて、目は窪みほおはこけて三月ほどすると、ついに死んでしまった。

と同時に裏の谷川の崖から石がぽとりと落ち、その石を小僧さんの墓石にした。
大興寺のお墓の中に一つだけ小さな石塔がある。それが、この小僧さんのお墓だと言われている。

今でもこの崖からは、石が生まれかけているそうである。

現在、大興寺の門前近くに温泉が湧き出て近隣の人達で賑わっている。
その名も「相良の子うまれ温泉」として。