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県境の尾根を縦走していた時のこと。
歩いていると、いきなり激しい雨に打たれ始めたという。

びっくりして後ろを振り返ると、今歩いてきた道はまったく濡れていない。

あたりを見回した彼は愕然とした。
雲一つない晴天の中、彼の周囲一メートルほどだけが雨に煙っていたのだ。
雨の勢いは強く、頭上がどうなっているのかは確認できなかった。

どんなに足早に駆けてみても雨の壁から逃れることは叶わなかった。
結局それから一時間にわたり、彼は雨中の人となった。

ひどい嫌がらせだ。あれほど腹の立ったことはない。
彼は本当に悔しそうな顔をして、この話をしてくれた。