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会社に勤め始めてから一人暮らしすることになった。
築年数とかは特に気にせず、値段と最低限の生活ができることを重視して部屋を選んだ結果、
築30年以上だけれど2万5千円というかなり安い物件に住むことができた。

一応古いキッチンとユニットバス付。
全部で6世帯という小さなアパートで、1階に住んでいるのは俺と隣の家だけ。
引っ越し時にチラッと見た感じでは、隣は母親と幼稚園くらいの男の子の二人暮らしのような感じだった。
典型的な貧困シングルマザー世帯のような服装をしてたけど、何ていうか特に惨めな雰囲気はなく明るそうな印象だった。

そんなこんなで一人暮らしが始まり、最初の頃は夜7時前には家に帰っていたんだけど、あるとき22時過ぎに家に着いたことがった。
特に意識していたわけじゃないけど、”ああ、隣もう電気消えてるな”なんて思いながら家のドアを開けた瞬間、パッと隣の家の電気が付いた。
少しビクッとしたけど特に気にせずそのまま家の中に入った。
ちなみに帰る時はいつもイヤホンほしていたので声とかはよくわからなかった。

それからまたしばらくして、たまたま携帯プレーヤーの電池が切れていてイヤホンをせずに帰る時があった。
時間は大体9時頃だったと思う。
家の前について鍵を探していると隣の家から「今日お父さん遅いの?」っていう声がした。
”え?お父さんいたの?こんな狭い1DKに3人で住んでんのか”と思いながら鍵を開けてドアをガチャッて開けたら、
隣の母親が「ほら、帰ってきたよ」って。
それ聞いて以来、隣の家が怖くなって帰る時は必ずうるさい音楽を聴き、なるべく隣は見ないようにしていた。
けれどある日、会社行くとき玄関脇の窓から子供がこっち見ているのに気付いて限界だと思い引っ越した。