KAI427035_TP_V

昔話で悪いが、新聞配達のバイトをしていた20年前の話
俺の担当エリアに、5階建ての古い公団があった

エレベーターがなく、同じ棟でも5階まで上がっては降り、また別の階段で
上がっては降りを繰り返さなければならない厄介な造りだったので
若い新入りに押し付けられがちな公団だったんだ

で、まだ真っ暗な冬の朝4時過ぎ
新聞の束を抱えてその公団の階段を駆け登っていると
半階上の踊り場でチャリーン!と何かが落ちる音がした
何だろうと見ると、ほの暗い裸電球の下にころがっていたのは
中学か高校の古錆びた校章バッジ
当然だが周囲に人ケはなく、バッジを置くような棚などもなく
まるで空中からいきなり降ってきたような感じだった

その時はあまり気にしなかったが
数日後、その公団では毎年のように老人の孤独死が出ていて
過去に踊り場からの飛び降り自殺もあったと聞いて、バイトを辞めた
見るからに陰気臭くて、昼間でも薄寒い感じのする公団だったし
(気のせいだと自分に言い聞かせてはいたが)
階段を折り返す瞬間に、スッとドアに吸い込まれていく黒い人影を
2,3度目にしたことがあったから