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実際に放送された謎の声の話。
前回と同じ局で、今度は隣のスタジオでのこと。
日曜の午後、2時間の生放送のバラエティ番組があった。
地元のお笑いを目指す男性(素人)が自分の知人をミキサー兼聞き役に据え、日常のくだらない話題をネタに曲を交えてトークする、まあそこそこに定評のある番組だった。

ある日曜(その1とは時期は全く異なる)、俺はその番組の責任者でもあるので、別の作業をしながら番組を聞き流す程度にチェックしていた。
パーソナリティは「こないだの『金八先生』がどうだった」とか「ウンコをチビった経験は誰にでもあるはず」などとくだらないトークをテンポよく進めていた。

すると突然トークが止まり、「今誰かしゃべった?お前か?」と聞き役に尋ねた。
聞き役も気付いたようで「いや、僕ではないですけど、誰かしゃべりましたよねえ」などと言っている。
俺はじっくり聴いていたわけではなかったので気が付かなかったが、異常事態と認めてスタジオに向かった。
パーソナリティは生放送ということで「なんかね、聞こえたんですよ声が。僕ともミキサーさんとも違う声がね…みなさんは聞こえました?」とアクシデントも上手く含めて番組を進めている。
「なんだったんだろうね?まあいいや、取り敢えず曲!」と曲に変わったところで俺はスタジオに入った。

事情をはじめとする訊いてみると、トーク中、ヘッドホンから知らない声が一瞬、一言分程度聞こえたのだという。
咄嗟のことで声の特徴やナニを言っていたのかは判らないが、あれは人の声だったとスタジオについていた2人が口を揃えて訴えた。

この頃、このスタジオでも異音が聞こえるという事態が多発していたので(それらはまた回を改めて)「またか」と思ったが、はっきりと「人の声」というのは前回を含めて2度目、しかも今回は生放送中である。

後でテープ(※)で確認するから、取り敢えず番組を進めるように指示してスタジオを離れた。
※放送局では放送した内容を確認するため生放送も含め自分とこの放送を一日中録音しているのである。
当時はビデオテープに3倍速で音だけ録音していた。

さっきの時間帯の放送が録音されたテープを聴いてみる。
確かに何か言っている。
声量は小さいがマイクからはそう遠くない。マイクの近くで小声で一言呟いたという感じ。
声質は、どちらかといえば男。当時スタジオにいたのも男ども2人だが、どちらとも声質は明らかに違う。無意識に独り言を呟いたということでもなさそうだ。

3人で首をひねりつつ、結局は原因不明の雑音ということで決着した。
まあ番組について大きな支障が生じたわけでもないので社内的にもせよ問題になるような話ではないのだけど、やはりいい気はしない。
その番組の2人とは今でも付き合いがあるが、あれはなんだったのだろうと未だに話題になる。

オチもなくてスマンが、「変な声」ということで、終わり。

オマケの話

音楽・放送業界の技術者の間で有名な話として、
「深夜など誰もいないスタジオや静かな屋外でマイクを入れておくと、何の音もしないのに録音装置やミキサーのメーターがふわっと動いたり人の話し声が録音されたりすることがある」
というのがある。

マイクは色んな音を拾う。
人間の耳に聞こえなくても音(というか空気の振動)を発するものは身の回りにもあり、人間に聞こえないだけでマイクには拾われている。
※一般に人間の耳に音として感知できるのは20ヘルツから20キロヘルツの周波数の空気振動で、それ以外の空気振動は音として感知できない。

しかし完全密閉され内部では音を発するものがないスタジオでそういった現象が起こることはまず考えられない。
だから技術者の間では、霊的な何かではないかと言う人も多い。

誰もいない空間に犬が吠え立てることがあるが、人間には感じられなくとも動物や機械には感知できる何かが存在する…そういう現象なのではないか。