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おいらの母は生前、大の猫好きで認知症患って施設に入居するまでメス猫雑種なアカトラを飼ってて、名前は安直に「アカ」って名前だった。

その猫は、母が逝った今も知人さん宅で元気にやってて、しゅんとした子猫時代の姿からは想像できないほど立派に成長し過ぎた肥満猫になってた。

時既に遅しだったけど、おいらもようやく母が生前暮らしてた地元に戻れて、ペット可なマンション最上階の角部屋住まいをするようになってから、預けっ放しにしてた「アカ」を引き取ることも考えたけど、母の知人さんが、当時の母の状態と子猫だった「アカ」の行く末を心配して、半ば無理して引き取って育てて貰ったし、「アカ」も知人さん宅に馴染んでた手前、流石に虫良杉なことだから、言い出せなかった。

それでも、猫を飼いたくなって「探してるんだよね」って話を、行き着けになった飲み屋さんで或る日したら、「雑種で良ければキジトラの幼猫が道端に棄てられてて独り雨に打たれて鳴いてたから連れて帰って、いまウチで保護中の子が居るよ」って話になり、月齢2ヶ月前後のメス猫が我が家の一員に加わることになった。

名前は「多分5月生まれぢゃね?」って、獣医さんの診たてから、母と同じく安直にも「メイ」って名前にしたんだけど、残念なくらい短い尻尾で、更に複雑に関節が折れ曲がってる「お前のご先祖さんは九州長崎出身だろ」なうえに、短足なお転婆娘に成長し、とにかくインターホーンの「ピンポ~ン」を聞くなり、違う意味のピンポンダッシュで、定位置のベッドの下に飛び込んで避難する、基本的には家族以外の人間が居る限りは、顔も見せないビビリなお嬢さんで、ときたまベランダにやって来るハトにすら、完全に舐められて無視されるような子に育っちまった。 

こんなビビリな性分だからか、夜中になると天井近くの一点を凝視して固まりながら、猫語で「ウニャウニャ」と、おいらの顔を見つめて話し掛けてくるんだけど、意思の疎通がイマイチなことも有って未だに理解不能だったり、おいらの仕事の関係から、職場やヨソに巣食う、よからぬモノをお持ち帰りしたりすると、普段は滅多に激オコしないのに、そういうときだけは、玄関を開けると同時にカッと目を見開き歯をむき出しにしたまま逆毛を立てながら警戒モ~ドの低い呻き声の後に「フゥ~!」と攻撃モ~ド完全移行していまい、今まで2回ほど顔突されて、首筋や顔を引っ掛かれたこともあるから、玄関口の「お清め塩」は必需品だったりする。

そのうちの一回は、嫁さんにも被害が及んで、ベランダで洗濯物干してた嫁さんが正体不明な黒い影から思いっ切り足を押されたとかで、その弾みで転倒して危うくベランダから落下しそうになったこともあったんだけど、後日その黒い影の正体を、霊感の有る人に見て貰ったところ、朽ち果てた家の風呂場で独り寂しく亡くなった女性の霊を、職場の憑かれ易い誰かがお持ち帰りして、更においらの方が居心地が良かったのか、霊感ゼロなおいらに憑いてしまい、おいらも知らないうちに自宅まで憑いて来たみたいなことだったけど、「メイ」の決死の一撃で完全退散したって話だった。

とにかく普段は、人見知りが激し杉な「メイ」なんだけど、唯一心を許せる他人なのが、母の命日にお経を上げに来て頂いてるお坊さんで、ピンポンダッシュは相変わらずなものの、お経が始まると、隠れ家からゴソゴソと出て来ては、お坊さんの周りで丸くなって、ゴロゴロと喉を鳴らしながら目を細めて聞き入ったり、お経を唱え終えたお坊さんからの説教話のときには、お坊さんの膝に上がって丸くなったり、撫でて貰っらたりしても、全く逃げ出す気配すら見せずに終始ご機嫌な変なヤツなんだけど、我が家の大切なお転婆娘さんには代わりないから、これからもヨロシクって話でした。