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高校生の時は俺はサッカー部だったんだけど補欠だった。でも俺は、補欠だったけど実力がないから仕方が無いと割り切ってた。
しかし、レギュラーの中に一人だけとってもむかつく奴がいた。こいつをAとすると、Aは俺に実力が無いことをわかっていて、「お前弱いから俺にジュース買ってこい」だの「お前俺より弱いからそこで一発芸やれ」だの色々なことを言われた。

無視すりゃいいじゃんと思うだろうけど、無視するともっとめんどくさくなるから仕方なくゆうとうりにしてた。
ある大会の前に、そいつが交通事故で怪我して意識不明になった。
心の底からざまあみろと思ったね。日頃の行いが悪いからそうなったんだ。

しかも、そいつが出れなくなったから俺が代わりに出ることになった。それを聞いた帰り道は、一人で爆笑してた。本当に神様っているんだなって思ったわ。
その次の日の夕方、いつものように河川敷をランニングしてた。ちょっと疲れたからベンチに座ってたら目の前で二人組がサッカーし始めて。下手くそな奴らだなと思ってたら案の定、一人が取り損ねて俺の方にボールが転がってきた。
「すいませーん」
うるせぇな。自分で取りに来いよ。そう思いながら立ち上がる。
「すいませーん」
うるせぇな!そんなに早くやりたいなら自分で取りに来いや!

そう思いながら後ろを振り向くと誰もいない。
「すいませーん」
あれ?さっきの奴らは?どこいった?
「すいませーん」
声は変わらず聞こえてくる。全く変わらず。
「すいませーん」
おかしい。自分の周りには明らかに誰もいない。距離が遠くなれば聞こえ方も変わる。
周りには隠れられそうな場所はない。
しかも、よく聞いていると声の数が多くなっている。
「すいませーん」「すいませーん」「すいませーん」
その声の中に聞き覚えのある声が
「すいませーん」
Aだ。だかここにいるはずが無い。あいつは今も入院しているはず。やめてくれ!思わず叫んでしまった。その瞬間、耳元でAの声で
「お前、調子のんなよ」

後日談としたら、ご想像のとおりあの日Aは急性脳なんとかで死んでいた。
なぜ、あの時Aが出てきたかはわからないけど、AはAなりにプライドがあって、いつも馬鹿にしていた奴に自分のポジションを盗られるのが嫌で仕方なかったのではないか。と今は思う。

その後の大会は、こんなことがあったわけだし、自分で辞退した。部活も辞めてしまった。
あれ以来、Aは一度も俺の前には来たことはない。
最終的に俺が言いたいことは、人の死はどんなに嫌いなやつの死でも喜んでは行けないということだな。
あとは、帰り道に一人で爆笑してると変な目で見られるということだな。