彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。

「按摩仏って呼ばれとる石仏があった。
 小さな滝のすぐ傍にポツンと置かれた石仏さんだったんだけどな。
 これに背を預けて座ると、背中をゆっくり按摩してくるんだ。
 実に良い塩梅でな、任せているとつい眠っちまいそうになる。
 でも、そこで寝ちゃいけねえ。
 ちょっとでも寝入っちまえば、その途端、背中をガツンと殴られるんだ。
 まるで、でかい掛矢(木槌)でドヤされたみたいによ。
 痣が出来るほどだったから、大抵の者は一回こっきりで止めておくさ。
 寝込むのを我慢すりゃ、至極気持ち良かったんだがな」

「その石仏さんな、いつの間にか誰ぞに叩き割られて粉々になっとったわい。
 うっかりと、柄悪い奴をド突いちまったんだろう。
 仏さんの癖に人を見る目が無えよなァ」
そう言って祖父さんはカラカラと笑っていた。