彼の祖父の持山には、大きな竹藪があるのだという。
ある時、そこで奇妙な物を見せられたらしい。
竹藪でない場所に、一本だけ筍が伸びて出ていたのだ。
妙に細くて、時々ぐるぐると誰かに振り回されているかのように、頭を振っている。
祖父さん曰く、これを放っておくとその辺り一面がすぐに竹藪と化してしまうという。
頭を振る筍を引き抜きながら、そんなことを教えてくれた。
祖父さんはこの筍のことを『尖兵』と呼んでいたそうだ。
その後友人も何度か、頭を振る筍を目撃しているという。
「俺はこの筍のこと、『切り込み隊長』って呼んでるよ。
まぁ引っこ抜くことには変わりがないんだけどな」
ちなみにこの隊長、味の方はまったくイケてないのだそうだ。
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