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ほんの50分くらい前なんだが、目が覚めた。
就職見学だから、いつもみたいに早く目覚めただけだと思っていた。

もう一度寝ようと、寝返りをうった。まだ眠かったんだ。
何台か車の走る音が聞こえていた。夢うつつで、頭は夢の中で耳はちゃんと聞こえている。そんな感じだった。
よく静かな場所にいたら、しんっとした音がする。
だが突然ステンレスの流し台に水の滴る音がし始めた。それと同時にしんとしたものが強くなり耳が痛くなった。

やばい

そう直感した。
背中側に『ナニか』がいるのを感じた。
隣の部屋の妹に気づいてもらおうと目の前の壁を叩こうにも動けない。
ならば叫ぼうとするが、口も開かず声が出ない。

やばい、やばい

焦った。
じわりじわりと気配が近づいていた。

「あー」

何とか声が出せると気配が薄らぎ、5分くらいだろうか動けなかった。振り向いちゃいけない気がしたんだ。
音も普通に戻ってやっと振り向けた。おずおずと室内を見回しても異常なんてないし、蛇口から水なんて一滴もでちゃいない。
ほっとしてはいるが、あの感覚に覚えがある。
実家にいた時に、夏の晩に足を引っ張られた時と同じ感覚だった。むしろそれ以上だった。

よほど口に力が入り食いしばったのか、右の顎の筋肉が痛いくらいに張れている。