horror441_TP_V

ある夜、田中さんは猫の唸り声で目を覚ました。時計に目をやると、夜中の2時である。
声に心あたりはあった。アパートの向かいに、ゴミ屋敷とまでは言わないが、どうやって住んでいるんだろうかと訝しむような家がある。

散乱した生ゴミに寄ってくるらしく、カラスや猫がいつも家の周辺にたむろして騒いでいる。住民を見たことはなかった。

声はちょうどドアの向こうから聞こえている。
アパートの廊下で喧嘩しているようだ。
我慢して寝ようとしたが、どうもおかしい。
かれこれ30分以上はうなり続けている。
普通、猫の喧嘩は数分の睨み合いのあと、どちらかが相手に飛びつき、一瞬で勝負は決する。
今夜は、長い。
田中さんは、明日大学のテストを控えていた。
このままでは寝られないと思い、ドアの魚眼レンズから廊下を覗こうと考えた。

もし、廊下に猫がいたら、ドアを叩いて追い払おう...。
そう思い、音を立てずにドアに近づく。
唸り声は今も聞こえる。
ドアのすぐ近くのようだ。
魚眼レンズを覗くと、目の焦点が合っていない女が唸りながらこちらを睨んでいた。