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子供の頃、明け方のまだ薄暗い時刻に、500mほど先の山を登っていく鳥居のシルエットを見たときは怖かったなぁ
空気がこれでもかってくらいに重くて、まるで冷えたオロナイン軟膏の中にいるみたいだった

しかもそれだけ離れてるってのに、向こうは俺の事を認識してるらしくて物凄い威圧感を送ってくるんだよ。

「見るな」  「身の程を弁えろ」  「無礼者め」  「失せろ」

みたいな感情が籠ってるやつを。


で、俺もできればそうしたかったんだけど、如何せん恐怖のあまり膝はガクガクでおしっこはダダ漏れ。
目の閉じ方もわかんなくて涙ボロボロ流しながら「はわわわわ、はわー」みたいな音が口から洩れるばかり
そんな進退窮まった俺の様子に向こうも気づいたらしく

「しかたねーな」  「まあいいか」  「ほっとけ」

みたいな感じに視線が弱まり、鳥居のシルエットは山を越えて見えなくなった
空気の重みもいつのまにか無くなっていた。