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5年位前かな。立川基地の自衛官の知人が
「富士山近くのうどんが美味い。用事で富士学校なんかに行ったりしたときは、いつもそこで昼食なんだ。一度食べてみたら?」と、うるさい。


じゃぁってんで、友達(山中湖の人とは違う)と出かけた。
富士吉田の店で混んでいたが、まぁ、はるばる来て食うほどには美味くない。

拍子抜けして、「じゃ、樹海の道でも通って帰ろう」となった。
行きは俺が運転したから、帰りは友達にまかせて俺は助手席に乗り込んだ。
樹海といっても真昼間だし、車ですっとばしているから、ふつーの林間の道と変わりがない。
ふと前方の梢と見ると、お決まりの髪の長い女性が赤いコートを着て突っ立っている。

「へ~、あんなとこに人がいる」と別に気にもしないで通り過ぎた。
100メートル近く離れていたかな。
だが、「待てよ?」やっと違和感が来た。「木の上だよな。あんなとこに人が立てるか?」
「あ~、見ちまったな」と思った。

霊を見たとき、その瞬間にゾワッとくることは案外、少ない。

あとからジンワリ「あ~、よく考えれば人間じゃない」という感覚が来る。
そのときもそうだった。「そう、樹海だもんな。出るだろ、やっぱ。こんな季節にコートだなんて。」
俺はけっこう昼間に霊を見る。

そういう体質らしい。