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夜中、山裾にある橋を通り掛かった時のことだ。 
下の川から、ゴリゴリと何かを擦り付ける重い音がした。 

橋の中程で自転車を降り、弱い外灯の光を頼りに目を凝らした。 

黒い水の中、頭を突き出した石塊が幾つも、独りでに動いていた。 
どれもこれも、とても人が抱えて動かせないような大きい石だ。 

手近な小石を拾い上げ、動く大石の上に落としてみた。 
小石が当たって硬い音を立てると、どの石もピタッと動きを止めた。 
まるで、生き物が辺りの気配を伺っている、そんな印象だった。 

やがて石は再び動き始めた。 
下の河原に下りるのは少々不気味だったので、それ以上見るのは 
止めてそこを離れたのだという。 

「え、それだけ?」と尋ねる私に、 
「うん、それだけ」とあっさり答える友人だった。