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ある夏の夕方、日も落ちて空がだんだん暗くなっていく頃、自転車で帰宅していた。 
もうすぐで家だ、と思っていると、目の前にとてつもなく違和感のある人影が。 

傘をさして、こちらを向いて、立っている、微動だにしない。 
上半身が見えない程深く深くさしていて顔は見えないが、スカートとハイソックスで女性なのだとわかった。 
雨が降っているわけでも、日が照っているわけでもなく、もちろん周りに傘をさしている人などいない。 

不気味だった。 

なるべく関わらずに早く通り過ぎてしまおうと思って、少し強めにペダルを踏み込んだ。 
その女性まであと1mという距離に迫った時、彼女は突然、指していた傘の先端をこちらへ向けてきた! 
両手でしっかりとした高さで真っ直ぐとこちらに突き付けているようで、やはり顔は見えなかった。 
とっさに危ない!と思い、急ハンドルで左へ避けた。 

その瞬間、彼女も俊敏な動きで90度回転し、また先端をこちらへ。 

不気味でしょうがなかったが、同時に、怪我したらどうするんだ!という怒りもあり、少し過ぎたところで止まり、振り返った。 
すると、彼女はまた90度回転し、先端をまたこちらへ真っ直ぐと向けて、微動だにせず立っていた。 
怪訝な顔をしたまましばらく固まっていたと思う。 

ふと、関わってはいけないと我に返り、全速力で家まで帰った。 
その後も同じ道を何度も通ったが、二度と再会することはなかった。 

周りの人はあまりにも平然としていた為、あれはもしかしたら幽霊だったのかもしれないなと思っている。