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当時、高校生の友人は地元の大きなお祭りに友達三人で行く事になった。 
何の神様かは解らないけれど、本殿と小さな分社のある神社のお祭りで、 
屋台がただ2キロずっと並ぶだけだけど地元の子供はこの日の為におこずかいを貯める程。 

連れの一人のMは生粋のお祭り女で、転校してきて初めて参加する事をとても楽しみにしていた。

友人:お菓子を報酬にたまに除霊している。霊媒師ではない。

お祭りは2日間行われる。 
うちどちらかは必ず崩れるのが毎度のことで、その年は初日に雪が降った。 
それでも祭りは盛況で、人と霊でごった返していたらしい。 

Mは大変はしゃぎながら屋台を回っていたのだが、『型抜き出来たから見せてくる』と行ったきり姿を消してしまった。 
友人はもう一人の連れと探したが見つからない。 

型抜き屋辺りを見渡したとき友人は気付いた。 
気付いて、それを連れて本殿の方へ走った。 

Mがいた。 
本殿ではなく、端の分社を一心不乱に自分のマフラーで掃除しているMを見つけた。

『掃除して欲しかったの?』 
『あーあぁ』 
『どうして私に言わないの』 
『あーあぁ』 

後から追いかけてきた、もう一人の友達はさっぱり状況が解らないようだったが、 
友人の何かを掴んでいるような不自然な手に「また霊がなにかしたのか」と尋ねた。 

友人が掴んでいたのはMの中身だった。 
型抜き屋の外で、友人は精神だけぽんと追い出されて糸の様な細い白いので肉体と繋がれている幽体離脱状態のMを見つけたのだ。 

中身に入ってるのは分社の神様。 
なぜこんなことをしたのか解らないが、誰よりも楽しみにしていたMを襲った事もあって、友人は色々な理不尽さが腹立たしくなった。 
その様子を見て本殿の神様も寄ってきた。 

『でていけ、ふざけるな』 
右手に掴んでたMを本体に押し付けて友人は神様を追い出した。 
神様を怒らせると恐ろしい目にあう事は知っていたが、生きている者に勝てる実体の無い者はいないらしい

Mは元に戻ったが、思った通り無理に押し込んだので目は覚ましたが吐き続けた。 
何が起こったのかわからないMと背中をさするもう一人の連れ、案の定怒っている分社の神様。 
神様の自分勝手に付き合ってるほど学生だって暇ではないんだよと、 
呪われるの覚悟で御神体を破壊してよりしろ無くしたろかと思ったそうだ 

その時本殿の神様が分社の神様をつついた。 
そうすると急にしおらしくなってよりしろに戻っていった。 
Mの体調の事もあり向かって来ないなら、と友人は神社を出ようとした 
その時、本殿のそれに気づいたらしい 

お菓子、正月飾り、餅。 
露天に並ぶ様々なものが供えられていた。 
分社は隠れるように裏にあり、祭り前の掃除の時も適当にされたのだろう、雪と汚れが酷かった。

少し休んだらMは嘘のように元気になり、露天をまた回りだした。 
友人は連れ達と話し合い、今度は露天のものを2つづつ買い分社に供えて帰った。 



「言いたい事があるなら言ってほしい。神様って本当に人間くさい」 

私に話してくれたあと、そんな事を彼女は言っていた