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俺の地元は開けた盆地を通る街道沿いの小さな町だが、 
母方のじいちゃんの家はその盆地から山一つ隔てた狭い谷にある。 
静かでのんびりとした所だが、人気の少ない寒村で山がある分日が落ちるのも早い。 

あれは16、17年前、俺が小学生低学年の頃だったか。 
お袋と二人、車でじいちゃんの家に遊びに行った帰りの夕方。 
峠道に入ると木々が茂っていて余計に暗くなる。 
道もクネクネして気持ち悪いし山道を抜けたいと思っていた。 

山腹に廃車や粗大ゴミが不法投棄してある場所があった。 
そこから突然 
「ウォーーーーーッ!」 
と叫びながら長髪の男が飛び出してきた。 

俺たちが投棄場所に差しかかる前だったのか過ぎた後だったのかは 
怖かったのもあって覚えていない。 
追いかけてきたかどうかも覚えていない。 
とにかくお袋は必死でアクセルを踏んだ。俺は恐怖のあまり声も出なかった。 
母一人子一人の母子家庭だったのでその晩はお袋と震えて眠った。 

その後もその場所を通る機会があったが男を見ることはなかった。 
とりあえず、しばらくの間は峠越えをしない迂回ルートで実家に行っていたと思う…。