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「私」は小さな花屋を経営している平凡な女。 
最近恋人からプロポーズされ、快諾した。 
ある日小包が届いた。 

中身は『素敵なあなたに』とメッセージカードがついた、趣味の悪いカフスボタン。 
婚約者に訊ねてみたが、差出人にもカードの筆跡にも心当たりがないと首をかしげる。 
常連客のA子、「私」よりおそらく年上の、落ちついた優しい女性に打ち明けてみると、どこかでブスが僻んでるんじゃないの?気にする事ないわよ、と励ましてくれた。 

ここで視点が変わる。 
「僕」は両親がなく、祖母に育てられていたが15歳で家出し、年齢をごまかして夜の街で働いている。

バーのボーイになった「僕」は喫茶店ウェイトレスのB子と親しくなり、彼女のアパートにも上がるようになった。 
姉弟か親友のように一緒にいるだけで満足だった。 
B子は「僕」の理想の女性だったので。 

ある日同僚のDQNに、親友の俺に彼女を紹介しろ、と押し切られて二人でB子のアパートに行った。 
タバコを買いに行かされたか何かで「僕」が外に出て戻って来ると、DQNは反撃で殺され、B子は抵抗した時にヤカンの熱湯を顔に被って苦しんでいた。 
B子の正当防衛で片がついたが、警察は「僕」に、お前が彼女に火傷を負わせたようなもんだよ、と言った。

「僕」が逃げるように帰郷してまもなく、 
「何をするにしても百回考えてからにしなさいよ」 
と言い残して祖母が死んだ。 

地上げ屋が祖母の駄菓子屋の土地を狙っていたが、「僕」は、店を畳んだら祖母が悲しみます(チラッ)と断った。 
でも結局土地を処分し、「僕」は百回どころか百万回考えたある計画のために東京に戻った。 

再び「私」視点。 
偽名の小包はあれからも何度か届いた。 
『あなたにはこれがお似合い』『あなたなんかこれで十分』 
カードの文面は変わり、中身もオモチャのように安っぽいベルトや財布に変わった。 

結婚式当日、花嫁控え室にやって来たA子は「私」の顔に酸をかけた。

駆けつけた婚約者にA子は叫んだ。 
「どこに目をつけてるのよ、こいつニューハーフなのよ!」 
そして昼でもかけている濃いサングラスを取り、前髪を上げると、額をケロイドで覆われていたがあの時より大人になったB子の顔があった。 
「あんたのせいで私は…何度手術してもケロイドは治らなかった」 
「男でもない女でもない、あんたにはその醜い顔がお似合いよ!」 

(私…僕は、普通の女になりたかった…水商売のオカマじゃなく普通の女に) 
(僕…私は、地道に働いて、愛する人と結婚して…平凡な幸せな女になりたかった) 
のたうち回る「私=僕」を見下ろして、A子=B子は泣きながら笑った。