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ろくに就職活動をしないまま大学を卒業してしまった俺は、職を求めて単身関東へ引っ越した。 
とりあえずバイトを見付けて何とか生活する目処が立った頃、俺はある地方局のローカル番組にハマった。

毎日の放送をVHSに録画して繰り返し見るだけでは飽きたらず、 
番組が視聴できない地域に住んでる友人に貸し出して布教活動をするほどのハマリっぷりだった。 
その番組の放送時間は30分なのだが、月~金の平日は毎日放送。 
視聴を始めて半年が経つ頃には、俺の部屋はその番組を録画したVHSが山積みになっていた。 

録画視聴がすっかり習慣になってしまったある日のこと。 
俺は諸々の事情で録りだめ状態になってた数日分の放送をまとめて見ていた。 
何か別の作業をしつつVHSの映像を延々と垂れ流し続け、2時間ほどが経過した頃。 
ふと違和感を感じてテレビへ視線を向けると、画面にはさっきまで全くなかった激しいノイズが。 
よくよく見てみるとそれはノイズというよりも、受信できないチャンネルを映した時の映像に似ていた。 
酷く歪んだ映像には何かが映っているようだが、それが何かまでは判別できない。 
音声も流れているようではあるが、雑音が酷くて全く聞き取れない。 

(うわぁ、録画するチャンネルの指定まちがえたかも?)と思いながら早送りボタン。 
暫くすると画面は鮮明な映像に変わり、いつものローカル番組のオープニングが映し出された。 
一日分の放送を録り損ねたことは悔やまれたが、それ以降はちゃんと録画できていたので別段気にすることもなく、 
数日後にはそのことすら忘れてしまっていた。

引っ越してから初めての年の瀬、帰省する旨を実家へ連絡した際、俺にとってラッキーな情報が入ってきた。 
実家暮らしの弟が自分の部屋にDVDレコーダーを導入したらしい。 
それまで使っていたビデオデッキも健在とのことなので、二台を繋げばVHSからDVDへのダビング編集ができる。 
俺は部屋に溜まった大量のVHSをダンボールに詰めて実家へ配送することにした。 

無事実家に到着し、既に届いていた荷物を受け取った俺は、弟の部屋で早速ダビング作業を行うことに。 
取説とにらめっこしながら手順を確認すると、どうやらVHSの映像を再生しながらでしかダビングはできないらしい。 
つまり120分のビデオテープに録画した映像のダビングを完了するのに、丸々2時間かかることになる。 
発送したVHSの中身を全てダビングするにはかなりの時間を要するが、収納スペースのことを考えれば致し方ない。 
俺はダビング作業を開始した。 

が、帰省してから3日が経過し正月を過ぎても、ダビング作業は遅々として進んでいなかった。 
俺自身に外出の用事があったり、弟が「部屋でゲームしたい」とゴネたりと、いろいろな要因が重なったためである。 
正月休みで実家に居られるのもあと2日、実家に送った全てのVHSのダビングはできないにしても、少しでも数をこなさなければ。 
と言うわけで、その日の俺は弟が朝からパチンコに出掛けたのを機にダビング作業を開始。 
1本のビデオのダビングが終わる度にテープを入れ替えるという作業を延々半日繰り返した。 

夕方6時を過ぎた頃、早めに用意された夕飯をリビングで食べていると弟が帰宅。 
「開店初日でめちゃめちゃ勝てた」と自慢気に語ってニ階の自室へ向かおうとする弟に、 
「ダビングしてるからデッキとかイジるなよ」と釘を差す。 
食事を再開して間も無く、ニ階から突然叫び声が。そして、ドタドタと慌てた様子で階段を駆け降りてくる弟。 
「お前、アレ何だよ!?」「何がよ?」「テレビに変なモン映ってんぞ!」