012Yamasha17103_TP_V

結構な時間が過ぎたと思うが、自分は固まったまま動けなかった。 
曲が終わり、カメラを見て取り、視線を戻すとそれはいなかった。 

その日は、母親が帰ってくるまで怖くてコンビニで過ごした。暗く 
なって母親が帰ってきた。怖くて、現実か確かめたくて、、、、 
そして、なだめてほしかったのに「あんた男やからな。男だけにみ 
えるん。」と拍子ぬけな回答だった。「悪させんから、夕方はいか 
んとき。」寂しくて、なんか孤独を感じた。 
中学生になり、4時半だから大丈夫かなとトイレに行くと、また 
ハーモニカのやつはいた。それの弾く曲が「遠き山に日は落ちて―、、、。」 
という曲だということはそのころはわかっていた。

何度か見るようになって、もう、あんまり怖くなくなっていた。 
自分の部屋が庭がよく見える離れになって、ときどき夕方なんとなく 
庭をみるとハーモニカの調べが鳴り、あいつが出現する。写真を撮っ 
たけど黄色っぽくセピア色になりあいつは映らない。 

高校生になり、友だちと夕方までゲームをしていた。「こいつなら見 
せてもいいか。」と思った。「秘密を共有したい。」と思った。 
庭を見て、そいつにも見せると、そいつは畳にもらしやがった。 
スーパーファミコンのポピュラスの心臓の鼓動BGMにしてたっぷりと。 

夏休みが終わり学校に行くと、みんながニヤニヤ笑って俺のことを 
「お化け屋敷」とか「ヘルイレザー」と呼ぶようになっていた。 
「ヘルイレザー」という映画に赤むけの怪物が出てくるらしい。 
今思い出してググったがよく似ていた。 
自分は「人を簡単に信用したらあかん。」ということを学習した。 
そいつが漏らしたことをしゃべって、さらに孤立した。

大学に入り就職したが、実家とはほとんど近寄らず、連絡もしなかった。 
親族の会議があって実家に帰った。どうやら母親は家を親戚に売るらしい。 
びっくりするほど安かったが、別にどうでもいいと思った。 

親族が引き揚げて、缶コーヒーを飲みながら庭を見る。 
ハーモニカのやつが現れた。明け放した座敷にいる母親は、近くにいる 
のに音も聞こえないのか、湯呑を片付けている。 

実害がないと言ったが、こいつをみると自分は人が嫌いになり、 
孤独になる。まあ、自分のせいでもあるかもしれないが、こいつ 
ののろいでもあるかもしれないと思いながら、その日は、最後ま 
で聞いてやった。