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八卦見さんはすごい人で、会って挨拶してすぐ 
「○○町のA神社のことだね?」といきなり言った。 
姉は電話で「怖い夢を見るから」としか言ってないのに。 
八卦見さんは「あんたの後ろに神様が見える」といって色々説明してくれた。 
姉はやっぱりA神社の神様に気に入られちゃってたらしい。 

でもA神社は開かずの神社になってて誰も来ないから神様が病んじゃってた。 
神様と荒れた神社に入って来た魔物が混ざって余計に病んじゃって、 
魔物は姉を連れて行きたいんだけど、神様は姉を守ろうとしてる。 
でも神様自身も寂しいから段々姉を神社に近付けようとしてた。 
普段は神様が勝ってるし、乱暴にすると姉に嫌われるから穏やかにしてるけど、 
夢の中ではその抑えが利かなくてあんな怖い夢になってたんだって。 
地元の大きな神社にお参りしてからは、魔物が抑えられたから 
神様が正攻法で誘おうとしてる。もう病んじゃって力が無いから、夢でしか誘えないんだって。 
昔だったらお嫁さんとして修行に行かされてるところだって言われてた。

「アンタは神様の妻になる気はある?」って聞かれた姉は、 
「いくら神様でも夢とはいえ棺桶に突っ込んでくれた相手なんて絶対無理です」 
ってきっぱり断ってた。 
八卦見さんは「正気の時の神様は「時々姿を見せてくれるだけでいい」って言ってるよ。 
でも、つらかったら近付かなくてもいい」って頷いてて、 
お守りはきちんと持ってろとか、地元の神社には行くようにしろとか注意してた。 
地元の神社の神様は力が強くて、もうそこにお参りした後だったから 
八卦見さんはあんまりすること無かったんだって。 
姉は「なんで私が見込まれたんでしょう」って聞いてた。 
「今まで前を通ったことは何度もあるし、何年か前に行った時は何もなかったのに」 
「前々から気にかけていらしたけど、 
その何年か前のお参りに行った時にお気に召したんだろうね。 
そういえばアンタ、最近行き始めた最初の時に雨に降られたって言ってたね。 
それ天気雨だったんじゃないの?」 
「はい、夕立だったんですけど、空の半分は晴れてて変な感じでした」 
八卦見さんはやっぱりねっていう顔をした 
「天気雨は狐の嫁入りっていうからね。嫁入りするのは狐だけじゃない、人間もだよ。 
しばらく来なくて寂しがっていたところに、 
また来てくれるようになったから、今度こそは逃すまいと思われたんだ」 
情の深い神様だから長引くことは覚悟しなさいって言われて、それであとは帰ってきた。 

姉はウォーキングのコースを変えて、わざわざ遠回りしてでも 
A神社の前を通らないようにしてる。 
変な夢を見る頻度は減ったみたいで、あとは徐々に治まっていくんだろうって言ってる。 

姉は夢の中で綺麗な山(本当に綺麗らしい)に入ったまま戻れなくなるんじゃないかって言ってた 
夢が夢だから、この場合は命がないんじゃないかって 
生きてるうちに嫁になるなら神社でお勤めするんだろうけど 
廃業しちゃってる神社だから、通って世話するみたい 
もちろん独身のままだし、この神様なら早死にする可能性も高いって