10年くらい前、俺がまだ修行僧だった頃の話なんだが。
大学を卒業したものの就職に失敗して(当時はいわゆる就職氷河期)しばらくフリーターしてんだが、爺さんが寺の住職だったこともあって親父に坊主の修行でもでしてこないかと言われた。
将来に不安もあったし、まあダメだったらまたフリーターに戻ればいいや、という捨鉢な気持ちでN県の修行寺に入った。
最初は修行生活きつかったんだけど、恐ろしいもんで人間どんな環境でも慣れる。半年もすると、案外普通に修行生活に順応してしまうもんだね。
当時、俺の先輩にTという人がいた。この人は零観の俺と違って霊感アリの人らしい。ガタイがデカくて彼女持ちのこの古参の先輩に、童貞なことをからかわれたっけ…。
ある日の朝方の作務(掃除)の時にT先輩が寺の山門の脇を指さして
「そこに黒い影がうずくまってるな。これは枕経(人が亡くなってから最初にあげるお経のこと)が入るかもしれん」
と先輩がさらっと言った。
ぎょっとして見てみるけど、俺にはそんなモノは見えない。
それに、日常の会話とまったく変わらないトーンで言われたので俺は(冗談にしてはキツいこと言うなあ)とスルーしてた。
そんなことをすっかり忘れて、夕飯になった時。
上の人から「今夜枕経があるから、○○と××、△△はついてくるように」と言われた。その時に俺はT先輩の話を思い出してゾッとした。
対照的に、T先輩は平然としてたような気がする。
ちなみに、その後にもそれと同じようなことはもう一回あったんだが…。
黒い影ってのは過去ログでよく出てくる死神的な存在だったんだろうか?
でも、何故かわからないんだけど、悪いモノには思えないんだよね。
いや、特に根拠はないんだけども。
ちなみに今でも坊さんやってますw
その「もう一回あった」ってのは
それからしばらく後の話
同じ山門のところに、たくさんの数のカラスが群がって騒いでた。
エサになるようなものも見当たらないのに。
これはさすがに不気味に感じて、俺も何かあるなあと思ったね。
「ああ、これはまた枕経だな」
と先輩も言ってたなあ。
案の定、数時間後御檀家さんとこでどなたかが亡くなられたという電話があった。
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カラスにとっちゃ親っつーか長老っつーか歴史上の偉人みたいなもんだから寄って集るのも無理ねぇ
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