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私が小学校低学年の頃の話だから、約20年ほど前。 
うちの近所には小さなお寺があって、その横に墓地がありました。 
ま、墓地といっても、そのお寺は幼稚園(私の母園です)も経営してたので、 
真横に幼稚園、墓地から道路一本挟んだ向かいには高層マンションもあるし、塀などもない墓地だったので、おどろおどろしさは全くありませんでした。


さて、ある日のこと、私は一人で遊んでいて、何となくその墓地まで来ました。 
何をするわけでもなくブラブラしていると、急に1つのお墓が目に止まりました。 
何の変哲もない和式の墓なのですが、不思議なことに、その墓には蟻が集っていました。 
別にお供え物があるわけでもなんでもないのに、蟻はお骨を墓石の内部に入れる入り口の隙間から、出たり入ったりしています。 
それを見ていると、私は急に、この蟻たちを追い払いたくなりました。

そこで私は、何を思ったのか、近くにあった水道で水を汲むと、その蟻たちを水で墓の中に押し流してしまいました。 
蟻たちがなすすべもなく墓石に飲み込まれて消えていくのを見届けた後、私は人のためになる何かいい事をしたような、スッキリした気持ちになって、家に帰りました。

異変はその夜に起きました。夜、祖母の横で寝ていると、急に動悸が始まり、全身の震えが止まらなくなりました。 
この時の奇妙な震えは、言葉にして説明するのは非常に難しいものでした。 
何だか体の内側で何かが膨れていくような感覚があったかと思うと、何故か頭のなかに、「太いロープ」のようなイメージが出たり消えたりするというもので、 
「太い紐が…紐が…」と、意味不明なことを祖母に口走っていたような記憶があります。 
熱はなかったようで、祖母も「どうしたんだろう」という風に首を捻り、両親も様子を見に来ましたが、 
何が悪いのかも解らず、とりあえず様子を見るということになったようで、病院には行きませんでした。

次の日の朝になると、不思議なことに奇妙な震えは収まっており、その後も特に異常はありませんでした。 
墓地は今でも普通にそこにあります。 
家から近いので、その後もよくその墓地の近くを通りがかったりしていましたが、別段どういうことはありませんし、恐ろしい感じもしません。 
恐らく、私が蟻を水で押し流した墓石も、今も変わらずそこにあるものと思いますが、今となっては、どれがあの墓石であったのかは、わからないままです。