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模試の帰りに、折角なので難波をうろつこうということになった。 
その当時、埼玉から引っ越してきたばかりの私は、大阪の街に不慣れで、しかも子供だけで繁華街を歩くというのも初めて(埼玉では、せいぜい、駅前のマルヒロどまりw)。 
友人達は慣れたもんで、地下街からエスカレーターに乗ると、建物の中に入った。 
なにやら、中高生に人気のブランドが軒を連ねているらしい。 
どこの店の何が可愛いとか、いろいろ教えてくれるのだが、 
ここでハグレたら家に帰れなくなるという恐怖心で、会話もそこそこに後を着いていくのに必死な私だった。 

で、その違和感に気付いたのは、1 
軒目のファンシーショップを出てすぐだった。 
視界がボヤけるというか、中心は明瞭なのに目の端が薄暗く靄がかかって見にくい。 

「なんか、コンタクト変だし、ちょっとトイレ行ってくる。」 

と言って、一人でトイレに向かった。 
トイレに行くと、個室は全て満員。 
水道の1つを占領して、コンタクトを外し水道水でゆすいでつけるのだが、今度はなかなか目にはいらない。 
イライラして格闘すること数分、やっとこさ装着完了。 
そうこうしてるうちに、急にトイレに行きたくなってきた。 
だが、個室から誰も出る気配がない。 

ちょーww、早くトイレ行きたいんだけど。

とりあえず、アピールの為に1つをノック。 
返事はなかったけど、下から影が見えるし、なにやらドアの向こうで頑張ってる人の気配。 
あんまり急がせるのも悪いと思い大人しく並んでいた、その時、 

「大丈夫?遅いから見にきたで。」 
「あ、ごめ~ん。なかなかトイレ空かなくて。」 
「あ、そうなん。じゃ、いこか?」 
「ちょっとw まだ終わってないって!順番待ちしてるんだからw」 
「え?そこ空いてるんちゃうの?」 

見ると個室は、全てドアが開いてて誰も入ってないのが一目瞭然。 
もちろん、入り口で話していた私たちの前を通らずに誰も外には出れない。 

勘違い? 

いや、確かにノックをした。 
中から鍵をかけないとノックはできない仕組みになっている。 
それに、確かにドアの向こうに人の気配を感じた。 
間違いない。 


帰宅して母にその話をしたところ、その建物はプランタンというデパートで、大阪では知らない人はいないほどの心霊スポットとのこと。 
千日デパート火災の犠牲者の霊がさまよっているという噂があるらしい。 

「ところで、コンタクトは大丈夫なの?」 
「うん、洗ったら大丈夫だったわ。乾燥して周りが黒っぽくみえてたみたい。ドライアイかも。」 
「え?乾燥したら白っぽくみえない?」 

よく考えてみれば、あのとき、視界に違和感はあったが、乾燥など眼球には違和感はなかった。 
ということは、、、 
コンタクトではなく、あそこが黒い靄に覆われていたのか。 
ちなみに、プランタンはとっくに閉店し、今は、ビックカメラにかわっている。