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中学一年生の時、新しい環境に慣れ、周りが見え始めた6月のある日、工藤さんという同じクラスの子に話しかけられた。 
女はいつの時代も群れたがる生き物だけど、そのクラスも例外ではなく、一番発言力のある第1グループ、対立する第2グループ、そのどちらでもない今でいう腐女子の集まりの第3グループという3つのグループに分かれていた。 
喧嘩しているわけではないのに、グループが異なるとほとんど会話することがない、つくづく女って面倒な生き物だ。 
私は第1グループ、工藤さんは第3グループに所属していて、入学から2ヶ月たっているというのに彼女と話すのははじめてで名前もうろ覚えだった。 

「守護霊って、本当にいると思う?」 
話しかけられたことも驚きなのに、脈絡もなく突然言われ、どう答えるべきか悩んでいると、 
「実は、君の守護霊が見えるんだ。知りたい?」 
当時、マイバースデーというなんちゃってオカルト雑誌を愛読していた私は、 
「え、み、見えるの?」 
半信半疑で会話にのってみることにした。 
「実は、ずっと君の守護霊に話しかけられてるんだ」 

「危険が迫ってる。僕が助けてあげる。」 
彼女の話によると、彼女の中の人は彼女の前世のなんとか(横文字、名前はもう忘れた)という人物で、必要な時に表に出てくるらしい。 
私の守護霊が彼女(彼?)にSOSをだしていて、それで今回、思いきって声をかけたということだった。 

信じるとか信じない以前に、どう返答すべきか悩み、適当に濁してその場を離れ、当時一番仲良しだった友達の鈴木さんに相談したところ、彼女も加えてもう一度詳しく話を聞くことになった。 

鈴木さんも加えて、再度、同じ話を聞いたあと、工藤さんから危険を避けるという魔除けのお守り(キラキラした石)をもらった。 
魔除けの効果か、何も起こることなく日々が過ぎていった。 

工藤さんは、前世の彼の時と本来の工藤さんの時があり、その当時は前世の彼の時が多く、色々とあちらの世界の話を聞いたものだった。 
そんな感じで、鈴木さんと工藤さんと私の3人で過ごすことが多くなり、私達は次第にクラスで浮いた存在になっていった。 

そんなある日、私たちの様子を心配した担任の先生が、両親に忠告するという出来事がおこった。 
両親にこれまでの経緯を説明するも当然信じてもらえず、 
「騙されてるのよ。しばらく一緒に過ごすのはやめなさい。実際に何も起こってないでしょ。彼女が口からでまかせを言ってるだけだよ。」 
と説き伏せられ、 
確かに両親のいう通りかもと納得した私は、彼女たちと決別し、二度と話すことはなかった。 

それから私は、父の仕事の関係で関西に引っ越し彼女達のことは忘れてしまった。 

工藤さんのことを思い出したのは、随分たった、とある事件の特集をテレビでみた時だった。 
幼女が連続で殺されるというそれまで起こったことがないような凶悪な事件で、当時、連日ニュースでやっていたのだが、私は詳細を知らなかったのだ。 
犯人も捕まり死刑が確定したということで、あらためて事件の特集が組まれたようだった。 
そこで、当時住んでいた家と近い場所での犯行だったこと、そして、事件の詳細を知った。 
そこで奇妙なデジャヴを感じた。 
あれ、この話、どこかできいたことがある。 
よくよく考えてみると、概要が工藤さんの中の彼が語った話と酷似していたのだ。 

その事件の報道をみて、工藤さんが想像で語ったのか? 

いや、そんなはずはない。 
だって、彼女が語ったのはその事件が報道される前、それどころか起こってもいない時だったのだから。