俺の地元では毎朝6時と正午、それと夕方の1日3回、どこからか童謡のメロディが流れて 
時間を知らせてくれるんだ。愛の鐘って呼ばれてた。 

どこから聞こえてくるのかずっと不思議だったんだけど、ある時に友達のAが
「ねぇねぇ、ユウイチくん(俺)、あの鐘って××山の上から流れてるんだって。いまからBと一緒に行ってみない?」そんなことを言い出して、 
放課後その山に登ってみることになった。 


山って呼ばれてはいたけど、丘って呼んだ方がいいくらいの所で、小学校低学年の俺たちでも1時間くらいで頂上のスピーカーのところまで上れた。そこでいつもよりかなりデカい夕焼け小焼けのメロディを聞いて、満足して帰ることにした。

帰り道はゲームの話で盛り上がってたんだと思う。 
途中で俺は靴紐が解けてることに気付いてしゃがみこんだ。 

結び終わって立ち上がろうとした時、誰かが後ろに座り込む気配がして、声を掛けてきた。 

「ユウイチくん」 

良く通る声で親しげに話しかけてきたから、Aかなと思って「うん、何?」って返事して振り返った。 

でも、誰もいなくてさ。 

AとBは雑談しながら少し先を歩いてた。


俺「どっちか俺のこと呼んだ?」 
A「え、呼んでないよ」 

俺「そうだよね・・・でも誰か呼ばなかった?」 
B「は?」 

俺「ユウイチくんって呼んだ声しなかった?」 
A「何それ、気のせいじゃないの」 

話を中断されて、その上しつこく意味不明なことを聞かれてAはちょっと不機嫌そうだった。 
Bも興味なさそうだった。 

結局それ以上は2人に聞けなくて、この話もこれでお終い。 
なんとなくその山が気持ち悪くなって、次に他の友達に誘われたときは断った。 

いま思い返しても誰かの気配とあの声は気のせいじゃなかったと思う。 
それくらいはっきり近くで名前を呼ばれた。