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小さな田舎町での話。たぶんつまんない話だと思うけど。 
20台前半くらいだったと思うが、少し頭の弱い(知能障害)町の名物お兄さんみたいな人が居ました。 
時に奇声を上げながら自転車を乗り回しているみたいな人でしたが、何かしらユーモアがあって当時小学生の俺らにとっては格好のからかい相手でした。 
頭の上で両手を合わせ、手放し運転で自転車に乗るのが得意技でした。 

ある時俺が彼の前でからかい半分、頭上で両手を合わせて手放し運転すると、彼は「真似をするなぁー」と怒って追いかけてきました。 
ある日町はずれの堤防裏の空き地で遊んでいると、彼は辺りを気にしながら自転車を押し、歩いて近づいてきました。 
この時の彼は真顔で、むしろ少し賢そうに見えるくらいでしたが、俺らはいつもと違う雰囲気に完全に呑まれていたかも知れません。 
これはその時、彼の話した内容です。 
「おまえら俺を馬鹿だと思ってるだろ、でもそんなことはどうでもいい。 
いいか、これから大切な事を話すから良く聞くんだぞ。 
明後日、この町でとんでもない事が起こる。 
遠い星の人が来て、子供を連れていくんだ。 
この辺りの場所がとても危険だから、絶対にここに近づくな。 
この事を知っているのは俺とおまえ達だけだ。絶対人に言うなよ。」 
そんなような事を言って、また辺りを気にしながら去って行った。 
俺らは三人だったけど、何だよアイツ、くらいであまりその事には触れずに、なんとなくその日は家に帰った。 
明後日というのは日曜日で、その日は大雨だったので家で俺はテレビを見ていた。 
次の日学校へ行ったが少し先生達の様子がいつもと違っていたのを覚えている。 
友達二人はいつもと変わらなかった。 
あとで親から聞いたんだけど、**さんちの子供が行方不明なんだって、という事だった。 
俺たちはそんなに仲が良かったわけでもなかったので、その事についての話はあまりしなかったが、 
その日を境にあの名物お兄さんを見る事は二度となかった。 
俺の家は転勤族で翌年引っ越した。 
行方不明の子がどうなったも、お兄さんがどうなったかも知らないが、お兄さんだけは時々思い出す。