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俺は高校を出て、二年大学に通い、色んな事情で中退し、知り合いの占い師の所に本式にお世話になり始め。  
日常ってこういうのだっけ、とか、何年かぶりにそう思っていた頃。 
あの男が帰って来た。 
俺の心配もどこ吹く風、へらへら笑いながら家を訪ねてきたその人は、またしばらくこっちで暮らすから、とそう言った。 

「ああ、もうなんて言えばいいのか。いろいろありすぎて言葉になりませんよ」 

「そうかそうか。寂しい思いさせて悪かったな」 

「いや、まぁいいですよ。とりあえず、お帰りなさいでいいんですかね?先輩」 

「おう、ただいま」 

至極あっさりとした再会だった。 
失踪が死亡になったんじゃなく、失踪がただの旅行だった事がわかったのだから当然といえば当然だが。 
こうして再び、俺と先輩はつるむようになったのだった。 

で、それから数日後のお話。

「よし、高知行こう」 

「なんですか突然」 

先輩が突然やってきてそういった。 
この人が突然なのはそういえばいつもの事だったのだが、久しぶりだと流石に面食らう。 

「なんですかって、お前が言ったんだろ?」 

「ええ?……ああ」 

そういえばそうだった。 
親父の同僚が心霊現象らしき物に悩まされていると聞いて、その話を先輩にしたのだった。 
そして、その親父の同僚が住んでいるのが高知県なのだ。 

「え、マジで行くんですか」 

「お前が向こうさんに許可取ればすぐにでもな。休みは貰えるんだろ?」 

「はぁ、まぁ……」 

高知ならそう遠く無いし、二日か三日休みをもらって旅行するのもいいかもしれないな、とぼんやり思った。 

「って言っても俺のじゃなくて親父の同僚の人なんで、どうなるかわかんないですよ」 

「大丈夫だろ。本当に悩んでるなら縋ってくると思う。そこまで悩んでないなら、こぼしたりもしないだろうし」 

先輩は笑った。 
ちくしょう、久しぶりだなこの展開。 
だけど、その日の夜にはさくっと許可を取った。 
……俺も、楽しみだったのだ。

「なんで俺運転なんすか」 

「免許取ったんだろ?」 

「まぁ、一応は」 

「なら大丈夫だ」 

普通免許は取ったが、普段はバイクばかり乗っているので運転に若干不安があったりするのだが、この人には関係無いのだろう。 
親父の箱バンを借りて高知へ。 
助手席の先輩が走り始めて30分で爆睡してしまったため、沈黙のまま高知へ入る。 
先輩は結局目的地に着くまでそのまま眠っていた。 

「先輩、着きましたよ」 

「……お?おお、ついたか。いやしかし田舎だな高知」 

「俺らの住んでるとこも対して変わんないじゃないですか」 

「そりゃそうか」 

さて、当の怪現象の具体的な内容はこうだ。 
親父の同僚……仮にOさんとする。 
Oさんは既婚で、件の家はその奥さんの実家だそうだ。 
これまで関西の方に住んでいたのが、今の支部に転勤になった為、新しい家が必要になった。 
Oさんの両親は既に亡くなっていて、妻の両親はもう老齢。 
せっかくだから多少職場から遠くても同居しようと考え、今の家に越してきた。 
ところが、だ。

「悪夢、か」 

「はい。悪夢を見るようになったそうです」 

「で、内容が?」 

「狭い所に閉じ込められる夢。まるで現実のような閉塞感があるそうです。明晰夢のように夢である事がわかるし、自分の体を動かす事もできるそうなんですが……」 

「不思議と、立てないし歩けない。ずりずり芋虫みたいに動くしか出来ないと」 

先輩が引き継いで言った。 
ああ、久しぶりだ。 
先輩のこの笑顔。 
本人は最高に楽しそうで、見ているこっちはすごく不安になる笑顔。 

「Oさん以外だと、Oさんの同僚がたまたま一泊した時に同じ夢を見たそうです」 

「なるほどな。さて、何が出るか」 

田舎特有の大きな一軒家だった。 
外から見る限りでは作りに違和感はない。 
……ん? 

「あれ、窓ですよね」 

明らかに一階ではない高さに窓が開いている。 
ガラス窓じゃなく、木の格子がはまっている格子窓だ。 

「よく気付いたな。多分屋根裏だ」 

「あ、そうか。物置か何かですかね」