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認知症の老人の描いた絵で思い出した。 
前働いてた介護施設であった実話だが、認知症の爺さんが絵が好きでいろいろ描いてた。

職員の顔や他の利用者の顔。案外上手くて 
「あ、これは○○さんだな」って分かるくらいだった。

ある日その爺さんの居室替えをしたんだが、急にその頃から興奮、妄言が多くなった。 
急に叫んだり暴れたりするんで職員もかなり困ってた。 
そしたら爺さんが「紙とペン!」っていきなりいいだして、絵を書き始めた。

書きあがった絵を見せながら 
「こいつが毎日ワシを苦しめよる」 
って言ってて、絵には首がくくられて舌が出てる禿げた老人が描かれてて、気味が悪かった。 
いつもの妄言だと思ってこっちは気にしてなかったんだが、休憩時間に年配の職員に見せたら、青ざめた顔で言った。

「××さんだ…」 
詳しく聞くと、以前××さんという人が、その施設で自殺したらしい。 
暴れる爺さんだったから拘束してたらしいが、その拘束に使っていたヒモで、職員が目を離した隙に首を吊ったそうだ。 
「そう言えば、○○さんが今いる部屋、××さんの部屋だったな…」 

その居室に、俺が働いてる間何人か入ったが、皆妄想が酷くなった。 
今は改装され、その居室はなくなったらしいし、俺はそこを辞めたから後の事はわからない。 

ただ、お祓いとかしたとは聞かないから、もしかしたらまだそこにいるかもしれない。