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3年前、俺が小6のころの話。 
小6の11月、俺らは修学旅行に行った。バスで3時間ぐらいかかったが 
紅葉で景色が良かったので苦にはならなかった。 
一日目の午後、いくつかのミッションをこなし、夕方までにホテルに戻る 
という班別行動の時間があった。買いたいものを買い、ミッションも終わって 
ホテルに向かっている途中で道に迷い、ホテルとは逆方向に2kmほど 
歩いていた。そして、見渡す限り一面墓場という不気味な地に迷い込んで 
しまった。班の霊感が強いやつが「墓場で転ぶと霊がつくことがある」と 
言うので、転ばないように一歩一歩踏みしめて歩いた。だが、不運なことに 
班の一人が転んでしまった。怪我はしていなかったものの、ひどく痛そう 
だった。俺は内心すごく不安になった。

予定時間も大幅に過ぎてあたりもすっかり暗くなったころ、やっと 
先生に発見された。ホテルにもどって夕飯の前に風呂に入った。風呂から 
出ると夕飯の鍋が用意されていた。修学旅行の割には豪華だった。 
夜、消灯時間のあとは怪談や、枕投げで盛り上がった。時刻は夜11時を 
まわっていた。ふと、窓の外に見える建物に目をやった。そのとき、Aが 
「なあ、さっきから気になってたんだけどあれなんだ?」と言った。 
向かいの建物の誰もいないオフィスから、白い服の女性がこっちをじっと 
みていた。顔は蒼白く、凍っているかのように無表情だった。手を振ると 
向こうも手を振る。無表情で。このときは「残業かな?大変だなぁ・・・」 
ぐらいにしか思わなかった。しかし・・・ 
「な、何だアレ!」とAが叫んだ。

向かいの建物をみると、やはり白い服の女性がいた。だが今度は違う。 
首を左右に激しく振っている。視線だけはこっちに向けたまま。 
部屋は混乱に陥った。そんな中一人が倒れるように寝た。 
また声が上がった。また向こうの建物に現れたようだ。今度は最上階の 
倉庫にいる。やはりこっちをじっと見ていた。ようやく、向こうが増える 
法則に気付いた。どうやらこっちが一人寝るごとに一人増えるようだ。 
「みんな寝るな!」だが、一人寝て、また一人寝て、最終的に向こうは 
隣の建物のさらに隣にまで出現し、7人に達していた。 
そのとき、見回りの先生が入ってきた。「あ!先生!」

「先生!大変!」俺らで先生に事情を説明した。しかし、 
「何もいないじゃないか。そんなに気になるならカーテン閉じろ」といって 
先生は部屋を出て行った。とりあえず言われたとおりにカーテンを閉めた。 
閉めたはいいが、何とも言えない視線を感じてむしろ怖い。しかたなく 
カーテンを開けた。向かいの建物が視界に入った。「いない・・・」 
さっきまで7人いたのが一人もいなくなっていた。そのとき、廊下の奥から 
足音が聞こえてきた。 
コツ・・・コツ・・・コツ・・・コツ・・・コツ・・・ 
まさか!見回りの先生は今来たばっかりなのに! 

足音は部屋の前で止まった。話し声が聞こえる。先生ではない。低く、 
不気味な声・・・俺らは部屋の真ん中に固まった。俺は初めて死を覚悟した。 
他の奴らも青ざめて震えていた。「く・・・来るなら来い!」 
10分ほど経っただろうか。足音と話し声は消えた。 
みんな安心したのか、次々に寝た。俺は寝れなかったのでしばらく起きていた。 
次の日、バスの中はこの話でもちきりだった。ただひとつ、不思議だったのは、 
俺ら以外、誰も人が増えるのを見ていないことだった。