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すぐにAの家族、Bの家族、俺の家族と地元の温泉連合の人たちが集まることとなった 
Bの母親は俺とAを白い目で見つめていた 
連合会長の爺さんに会合が始まるや否や「お前はあれほど立ち入るなと言ったのに!」と怒鳴られた 

連合の人たちから「あの温泉の怨念は弱まるどころか年々高まっており、観光客が立ち入ってしまうのもそのためだ。立ち入った観光客は何者かに引き寄せられるかのようにあの温泉に入ってしまったと皆話している」と聞かされた 
そしてあの温泉の名はこちらの地方の古い方言で「二度目、再び」という意味であり、祟りも2度あの温泉に立ち寄ったものに降り注ぐというのだという 
会長さんは「Bは1度目か2度目か知らないがなにかあの温泉の霊たちにとって気分を害することをしてしまったのかもしれない」と言った 

更にお袋からもとんでもないことを聞かされた 
小さい頃俺らが温泉に入ろうとしてたまたま通りかかり俺らを連れ戻したトラックに乗ったおっさん 
あの人はてっきり地元の人だと思っていたが、お袋によればあんな人は見たことなく、当時もAとBの母親と不審に思っていたという 
そして連合の人に相談しもしやと思い例の温泉の事故によって亡くなった人の写真を見ていくと、おっさんとよく似た人物がいたのだとか 
「あの温泉に立ち入るなとわざわざ警告してくれた・・・それなのに・・・」お袋は泣き崩れた 

連合の人によればこの地からなるべく離れること、お払いされた桶を渡すからそれを風呂場だけではなく事故の危険がある水場の近くに行く時はなるべく持ち歩くことが祟りを絶つ方法だと教わった 
俺と両親はこの地を離れる覚悟をした。

これで大体の経緯は終わりです 
Aもあの土地を離れようとしたのですが、両親から「代々農家として暮らしてきた私達もあんたも都会に出て暮らせるわけがない」と猛反発を受け結局残ることになってしまいました 
そして周りからの避けるような視線、Bを死なせてしまったことへの責任感、いろいろなものが積もっていたのでしょう 
数回その土地から離れたところでAと会ったのですがその苦悩はよく分かりました。自分もAだけにB死亡の事故の責任を取らせまいと必死に励ましたのですがAは昔から悩みを自分だけで抱え込みやすいタイプなので中々事態は進展しませんでした 
自分もAがこのままではどうにかなってしまうのではないかと思っていたのですが、ちょうど就職活動で多忙なこともあり最後の1年は結局Aとは会えずじまいでした 

Aが自殺したと連絡を受けたのはなんとか就職も決まり、もう1度Aと会おうとしようとしていた矢先のことでした 
葬式には勿論出させてもらえなかったので断片的にしか情報はありませんが、風呂の中でリストカットし死亡してたとのことでした 
その場にお払いされてた桶があったかどうかは分かりません。ただA自身の意思で自殺という選択肢を選んだとすれば、それは最早祟りとは関係なくなってしまいます 
ただ何者かに引き寄せられるように風呂での死を選んだとしたら・・・ やはり祟りということになってしまいます 


死亡に至る経緯はどうあれ結局自分は2人の親友を亡くしてしまいました 
この事件のきっかけを作ったのは自分です。そしてBがそのあおりを食らった形になって死にました。そして自分だけ逃げることができる立場なのをいいことにAを放置して結局Aも死なせてしまいました 

桶のお陰か今でも周りに不可解な現象はあまり起きません 
しかし最近自分は最早○○温泉の霊よりもAとBの2人に祟られてるような気がしてきました 
今でもあの温泉はあるのでしょうか、自分にはよく分かりません 

最後は懺悔のようになってしまいました。申し訳ありません