pakuakkdajk_TP_V (1)

 その時だ。 
「ギャーッ!!!!!!」 

すさまじい悲鳴が静まり返ったトイレの中に響いて、僕はそれこそ飛び上がって驚いたよ。 
恐怖に目を見開いて振り返ると、開いていたはずのトイレの個室がギィ、と少しだけ開くのが見えた。 

なのに中からは一向に誰も出てこない。 
正直、発狂してしまうかと思うくらい怖かったよ。 
でもどうしても中を確認せずにはいられなかった。 
怖いものみたさ、っていうのかな。 
あの時はそんなことを言っていられる精神状態じゃなかったし、生半可な怖さじゃなかったけど、それでもそんなような感情に僕は突き動かされたんだと思う。 
震える足で歩み寄って、個室の扉に手を伸ばした。 
少し開いている扉は、もちろん抵抗なく開いたよ。

「あっ!」 
僕は思わず悲鳴を上げて、それから口を押えた。 
中には、確かに男子生徒がいた。 
でも彼の下半身はひどくねじれていて、しかもなぜか全身がびっしょりと濡れていたんだ。 
ぴくぴくと力なく震える体を見て、僕は彼がまだ生きている事を悟った。 
そうして、慌てて先生を呼びに行ったんだ。 
彼はそのまま、救急車で運ばれていったよ。 
その後の事は僕はわからない。 
何せ僕の高校は一学年だけで五百人以上生徒がいるマンモス校でね。 
名前がわからなかったら彼がどの学年のどこのクラスの誰なのか調べるのは難しい。 
夏休みだったからその後の噂を聞く事もなかったしね。 
亡くなったら騒ぎになるはずだから、きっと無事だったんじゃないかな? 
……これは僕の願望でもあるけどね。

かわりに、友人からこんな話を聞いたよ。 

学校に貯水槽、っていうのがあるだろう? 
トイレの水なんかはあそこから引いているらしいんだけどさ。 
前に、学校に忍び込んで遊んでいた女の子が誤ってあの中に落ちてしまったらしいんだよ。 
落ちる時に足を変な風に捻ってしまって、這いあがる事も出来ずそのまま溺れてしまったそうなんだ。 
事故があったのはちょうど夏休みだったから、可哀想に女の子は気づかれる事もなく暫く貯水槽に沈んでいたそうだよ。 
それからさ。貯水槽に繋がったトイレに、女の子が現れるようになったのは。 
私はここよ、って訴えるように、人気がない時にトイレに現れるんだ。 
彼女は、気付かれずに一人で逝ったのがよっぽど寂しかったんだろう。 
現れたら、必ず扉をノックしていくそうだ。 
それに返事をしたら最後、彼女と同じ目に合わされてしまう。 
一人だけでそんな目にあったのが彼女はとても寂しいんだからさ。

……だけど実はこの事件、僕の学校であった事件じゃないそうなんだよ。 
別の場所で起きた事件が噂となって別の学校に伝わり……伝わった先の学校で全く同じ女の子が現れるんだ。 
言霊という言葉があるだろう。言葉にはとても強い力がある。 
噂を媒体として彼女は色々な場所で仲間を集め続けているのかもしれないね。 
……君達、この話をもう聞いてしまったろ? 
人気のないトイレに入った時は、不可解なノックにはけして返事をしてはいけないよ。 
それでどうなっても、僕は責任がもてないからね……。 

僕の話はこれで終わりだよ。