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 オレが小学校のときの話なんだけど、同級生にガネと呼ばれてるやつがいて 
家がクズ金屋だったからそういうアダ名がついた  
学力は低くて小6でも自分の名前もまともに書けなかった 
毎日同じシャツを着てきて不潔だったこともあって友達はほとんどいなかったけど 
イジメの対象にもならなかった 
粗暴なことはしなかったけど、何をするかわからない不気味さがあったんだな 

オレが学校の帰り道に土手を歩いてたら、すぐ下の池のほとりに 
その日学校を休んでたガネがいて何か黒い物を手に持ってる 
やつはオレの姿を見かけるとニヤッと笑って 
両手でその黒い物を思いっきりオレに向けて投げつけてきた 
それは平べったく回転して黒い液体をまき散らしてオレの足元に落ちた 
よく見るとそれは亀で手足や首の穴から液体がこぼれ出てた 
血に池の水が混ざったものだと思った 
もう一度ガネのほうを見ると、口元がくちゃくちゃと動いていた 

ガネの家は火葬場の近く、オレらの地域では差別される場所にあったんだが 
鉄くずやら何かわからない部品がつぶれそうな家の脇にたくさん積み上げられてて 
壊れた車も数台タイヤを外して置かれてた 

で、オレの先輩で族に入った人が深夜バイクでガネの家の前を通りかかったら 
その車の中で何か動くものがあるのをたまたま目にとめて 
止まってヘッドライトで照らしてみたら 
そのフロントグラスもない車にガネが一人で座ってたそうだ 
小雨が降ってたしすごく不気味に感じて 
先輩はすぐその場を去ったそうだ 

先輩からその話を聞いて、オレはガネと比較的親しかったので 
何気なくそのことを話に出してみたら、やつは言葉も不明瞭なんだけど 
女の人が会いに来るというようなことを言ってて 
オレはまったく信じなかった 

ガネの家の前の道は墓地公園に続いていて、よく族が走り回ったりしてて 
別の先輩がまたガネが一人で車の中にいるのを目撃し 
そのときは車のまわりを青い火の玉のようなものが飛び回っていたそうだ 
まあ話に尾ひれがついてるのかもしれないが 
その後三月くらいしてガネは自家中毒で死に、一家はどっかに引っ越していったな