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 今から10年前だが山口県に転勤して、アパートを借りて一人暮らししていた。 
アパートは2階建てで、俺が借りたのは一階の端。10畳1Kで安くもなく高くもなく普通の部屋だった。 
職場に近く、最初の1ヶ月くらいは何事もなく快適な生活だった。 
2ヶ月目に入ろうとするとき、何の前触れもなく異変が起きた。 
部屋の真ん中に布団を敷いて寝ていると、金縛りになった。 

そして、布団を中心に誰かが「うぉぉ…」と言いながら歩き回っているのがわかった。 
その時は、怖ぇ…と思いつつも金縛りは生理的な状態が原因だと頭の片隅にあったので、 
それほど焦りまくるようなことはなく、脳みそが寝ぼけ状態なだけだと思った。 
そして、気づくと朝になっていた。初めて金縛りを経験したので、ちょっと嬉しさを感じる 
余裕すらあった。あれが金縛りかぁ…って感じで。でも、甘かった。 

それは、その日から毎日起きた。初めの何日かは歩き回るだけだったが、そのうちそいつは 
布団の上にのし掛かってくるようになった。 
足の方から徐々に締め付けるように頭の方まで移動してくる。しかも「うぉ…、はぁはぁ…」 
とサラウンド音声と一緒に。 
それでも、金縛りは生理現象、人の気配は夢と言い聞かせて、気がつくといつも朝になっていた。 
ま、かなりリアルな感覚だが、所詮生理現象だ。と自分に言い聞かせて、普通に会社とアパートを 
往復する生活を送っていた。

だが、ある時会社の先輩に言われた「お前、目の下のクマ凄いぞwww」。 
言われてトイレの鏡で見てみたら、確かに凄い。 
アパートでも毎日出掛ける前に鏡をみるのだが、部屋が薄暗いせいか気が付かなかった。 
そして、クマは日に日に凄い事になっていった。そして、その間、寝ている時の金縛りと「うぉぉ…ハァハァ…」 
は毎日続いていた。 

さすがにこりゃヤバイと思った。きっと寝不足なんだろうなと思い、思いきって木・金曜日と2日間休暇を貰って、 
土・日曜合わせて4連休をとることにした。4連休ずっとアパートでゆっくり過ごす予定だった。 
しかし、これが逆に悪かった。午前中寝てても金縛りとともに奴が来る。昼飯食った後寝てても来る。 
寝てるとエヴリタイム来る。休暇初日でヤバいと気付き、医者に行くことにした。 
といっても何科に行ったらいいのか見当もつかなかったので、受付に行って「睡眠障害っぽいけど何科がいい?」 
と聞くと精神科とか言ってくる。 

精神科にかかってると会社に知れると何かヤバいかなと思って、結局あれこれ考えて病院を出てきてしまった。 
出てきたのはいいが、困った。行くところが無い。アパート帰って寝てもアレが来る。 
転勤間も無い事もあり会社には相談できる友達もいない。 
仕方ないので、東京勤務の時の友人Aに電話してみた。Aは幸い(?)にもオカルト好きだった。 
なので、ことの次第を正直に話した。予想通り嬉々として相談にのってくれた。 
Aはよく俺に心霊スポットに行っただの霊が見えただの話しをしてくる奴だ。 
俺は幽霊否定派だったこともあり、いつも水掛け論的な議論になったが、それはそれでお互い楽しんでいた。