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事の発端は半年ぐらい前の事 
ある土曜日、俺は休日で携帯を家に忘れてしまったまま外出してて、用事を済ませた後に帰る途中だったんだけどさ 
ちょうどエスカレーターを上がった時に、ちょうど電車の扉が閉まって電車が発車しちまったんだよな 

電光板を見たら次発15:27という表示が消えて、それ見送りながら「ついてねーなー」とか思ったのが記憶にあるんだ 
横のアナログ時計も見て、大体15:27ぐらいの時間だったのを記憶している 
その時、ふっと「月曜から出張なのに必要物を会社に忘れた」って事を思い出して、 
休日だけど帰る前に会社寄ってそれを取って帰る事にしたんだ 
んで、会社に行って忘れ物を取って、帰宅したら忘れてた携帯に同僚から留守電1件 
留守電機能とか初めて使うなぁ…とかどうでも良い事を思いつつ再生したんだ 

「じゃあ、机の上に忘れ物あるから明日の日曜日に取りに来て、って言っておいてー 
 (数秒の間)うん、何なら折り返し電話してほしいって事だけでも伝えてくれたら僕の口から伝えるから」 

留守電はそれだけだった 
おいおいやべーよ、何だよこの喋ってる感じの口調…っつーか、その忘れ物なら取ってきたんだけど…って思いながら、 
取りあえず留守電メッセージを保存しようとしたら、操作を間違えたかなんかで削除されてしまった 
まぁ、それに関しては多分純粋にミスったんだろうけどな 
既に忘れ物は取って帰ってきたけど、電話してくれた事には感謝してそいつに礼を言うべく電話してみたんだ

同僚「もしもし」 
俺「あ、休日出勤さんですか。チースwwww」 
同僚「うっぜ、もう上がったよ。っつか、お前月曜から出張じゃなかったっけ」 
俺「忘れ物ならさっき思い出して取りに行ったよ。留守電残しといてくれたから礼でも言っておこうと思って」 
同僚「留守電なんか残してねーけど?」 
俺「いや、残ってたよ?」 
同僚「……そういえば、お前って独身じゃなかったっけ」 
俺「独身に決まってるだろ。結婚とか隠せるもんじゃねーし」 
同僚「だよな…いや、お前の携帯に電話した時に女の子が出たんだけど…」 
俺「え?」 
同僚「何か混線か登録ミスかと思って『(俺)さんの携帯ですか?』って聞いたら『そうですよ』って返ってきたんだ」 
俺「…おう」 
同僚「それで『お父さん、携帯忘れて出ちゃったんですけど、伝えた方が良いですか?』って礼儀正しい声が聞こえてな 
    忘れ物有るから取りに来てって言ったら『分かりました。伝えておきますね』って言われただけだよ」 
俺「お前以外の声はなかったけどそこが留守電の内容かな」 
同僚「変な留守電のメッセージにしてるんじゃねーだろうな…」 
俺「そうですよって返す留守電とか何だよそれ。ドッキリみたいなよく分からないボケはつまらないけど、電話はありがとな」 
同僚「ドッキリじゃねーっつーの。女の子を家に閉じ込めたり変な犯罪して会社に迷惑かけるなよ」 
俺「してねーよ」 

DTだし子供に縁が無いから全く女の子とか心当たりねーわー 
とか思いながら、留守電に伏線を埋め込むとか手の込んだ悪戯するなーと思っていたんだ 
んで、携帯の着信履歴を見直してみたら驚くことに着信時間が15:25 
忘れ物を思い出したのが15:27の電車発射直後だから大体それぐらいとかどんなシンクロだよ、って焦った 

守護霊的な物が居て、もしかしてそいつが俺の電話を取ってくれて俺に伝えてくれたんじゃねーかなー 
とか心の中で思いつつ、「自宅に居たら守護してねーじゃん自宅守護霊www」って自分にツッコミを入れたのが半年ぐらい前

んで、先月ぐらいの話 
俺はマンション住まいなんだが、二つ隣の部屋に住んでるおばさんとエレベータ前でばったり遭遇したんだ 
その人は普段から無駄にフレンドリーに話しかけてくる典型的『大阪のオバチャン』 
俺は人付き合い苦手だから「仕事終わって疲れてんのに嫌だなー」とか思ってたんだが、案の定話しかけられた 

おばさん「(俺)ちゃんは若いのに子供さん育てて大変やなー」 
俺「えっ!?」 
おばさん「あの子って今いくつぐらいなん?」 
俺「あー、はぁ…」 
おばさん「昔からそうやけど、最近は特に危ない大人の人が多いからな。女の子一人で外を歩かせたらあかんで」 

とかそんな訳の分からない事を言われて、正直「何言ってんだこの人、早くエレベータ来てくれ」としか思ってなかった 
「最初はどこの屋敷のお嬢さんかと思ったわー」とか「奥さんって外人さんなん?」とか色々言われたんだけどさ 
誰かと勘違いしてるんだろうなー、とか思ったんだが否定するのも面倒くさいから適当に相槌して流したんだ 

エレベータ到着したんだが、おばさんと別れたい一心で「そういえばコンビニ行くの忘れてました」とか言って見送った 
おばさんがエレベーターに乗り込んで先に行くのを見届けた後、俺も階段でゆっくりと登って帰宅 
いつも通り下駄箱の上に鞄を乗せ、自室の扉を開けたんだ 
その時に 

ドールと目が合ったんだ 

…今更だが、俺はドールが好きで、俺の持っているドールが金髪でドレス姿なんだ 
そのドールが俺を見ている。ただこっちを向いて座っているだけの筈なのに、妙に生々しい 
一秒も経たない内にその『生々しい』感覚は無くなり、いつものドールの姿に戻った 

屋敷のお嬢さんとか、外人さんとか言ってたな、って事を思い出してさ 
「あぁ、俺の『娘』ってのはこいつの事か」って心の中で妙に納得しつつ、前述の忘れ物事件の事も思い出した 
「あの時はありがとうな」って声に出して言いつつ頭を撫でたら、女の子の声で「いつもありがとう」って聞こえたんだ 
何かさ、その瞬間、涙腺が滅茶苦茶緩んで気付いたら撫でながら号泣してた

先週ぐらいにおばさんと話したんだけど、その時にちょっと俺の『娘』について聞かせて貰えた 
その時はだいぶ前に山に一緒に連れて行った時の事を嬉しそうに話してた(実際行ったが、誰にも喋ってない事)とか、 
「お父さんってただいまも頂きますも言わないんですよ!」とか言ってたって事を聞かされた 
それ以来、帰る時には「ただいま」って言う事にしてるんだけど、やはり俺には動いてる姿を見せてくれない 

隣のおばさんが霊感あるとかそういうのかなー、って思ったんだけどさ 
それとなく俺の『娘』って目立ちますかね、みたいな事を聞いてみたんだけど、 
おばさん曰く、あの金髪は目立つから結構有名で皆知ってる、って言うんだよな 
別に見返りを求めてドールを愛でている訳じゃないんだが、やっぱり動いてる姿を見れないのは寂しいし悔しい 

ちなみに、号泣した日の夜に「…俺こそ、いつも感謝してんだよ」って言ったんだけど何も起こらなかった 
結構恥ずかしかった 
暇な時、俺が外に行く振りをして扉の外で出てくるまで待ってみようと思う