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かなり昔の小学生の時、修学旅行で、日光に行った。定番スポットの華厳の滝にも行った。 

エレベーターで下り、展望台へ出たところ、他校の生徒も多く、なかなか、僕のクラスは 
展望台最前にいけない。 

やっとの思いで、フェンスの前についたころ、僕は、霧の中の壮大な滝に目を奪われていた。 

みんなも「スゲ~」「デケぇ」とか言っていたと思う。 

そんな中、僕の左側のすぐ後ろから、「え~」とか「どうして?」とか、 
みんなとはトーンの違う女の子の声がした。 
口喧嘩でも始まったかと思い、振り返ると、クラスメートの女の子が滝の方を見つめながら、大粒の涙を流している。
 
この子は所謂クラスの女子のリーダー的な子で、殴っても殴り返してくるような活発な子で、 
その子が泣いていること自体も、また、その泣き顔を隠しもしないことに、僕は凄く驚き、 
「どうしたの?」と声をかけた。彼女は滝の方を見つめたまま、いくつか聞き取れないことを呟いた。 

当惑しながらも、再び「どうしたの?」と尋ねると、
滝の方をを見つめたまま「いやぁ、こっち見て手を振ってる」と言い出した。 

僕は、当時(今もか)ちょっとオツムの足りない子だったので、
華厳の滝が自殺名所とかエレベーター事故とか心霊スポットの話とか 
全く知らなかったので、そっち系のこととは思わず、「誰かいんの?」と滝の方を見直して滝周辺に人を探したりしていた。 

そのただならぬ彼女の雰囲気に周りも気付きだし、取り巻きの女子が彼女を先生の所へ連れて行った。 

その日終日、彼女は先生たちとの行動になり、食後あたりに、宿の部屋のみんなの元へ戻ったらしい。 

彼女が離れている間、勿論クラスの間では心霊の話で盛り上がり、華厳の滝が自殺のスポットであることも僕は知った。
 
夜、女子の部屋で彼女が戻った後、どういう話があったか知らない。
また次の日、男子もそのことについて、誰も聞こうとしなかった。 

彼女に思い出させてはいけないというような雰囲気だった。 
僕は何も見ていないし、怖い思いもしていないけど、身近で起きた不思議な体験だった。 

もう昔の話だし、彼女の顔もよく思い出せないんだけど、あの時の、周りのことなんて、一切気にしない、 
何かに目が釘付けになった彼女の雰囲気は記憶に今も強く残っている。