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 歩き巫女がとった方法は「逆さ埋葬」だ。 
仏説に基づく物で、地獄など悪趣に堕ちた者は現世とは逆の姿をしていると、つまり屍体を物理的に地獄と同じにする事で祟りを封じた。 

それだけでは済まさず、「黄泉還り」を防ぐ為、街道に地中深く穴を掘り「逆さ埋葬」した上で何重にも石で封をし、埋葬した。 
そうする事で「黄泉還り」を防ぎ、よく人が往来する事で霊が浮かび上がるのも防ぐようにした。 
そして鬼となった女の祟りは封じられた… 

俺はここまで聞き一息入れ、そして疑問となる事を高村に問い掛けた。 
「今の話が本当だとしても何でその女は死んだ後の事も知ってんの?おかしいだろ」 
正味、今の現代に呪いだ、怨念だが残っているとは思え無かったからだ。 

高村はこう話してくれた。 
「正確に言うと…女の霊が起こした事じゃないらしい、問題は「箱」の方らしいんだよ…」 

拝み屋の話によると、霊は今だに元街道に封じられたままか、すでに地獄に堕ちているらしい。 
今回の事を引き起こしたのは女が残した「外法箱」だと言った。 

「魅入られたのは「箱」に残る怨念なんだよ…」 
高村は泣きそうな声で呟いていた。 

俺は重過ぎる雰囲気を軽くしようと高村に言った。 
「言い方悪いけどさ…由美さんが亡くなったならもう終わった事じゃないかな?お前が元気無かったら由美さんだっ…」 
高村は遮るように怒鳴ってきた。 
「何も終わってねーよ、知った風に言うな」 

高村は怒鳴った後、ハッとして「悪い」と一言言って俯いた。 
俺は周りに軽く頭を下げ、高村に尋ねた。 
「終わってないってなんだよ?何が終わってないんだよ?」 

高村はか細い声でこう言った。 
「最近見えるんだ…昼間だろうが夜中だろうがあの女が…俺もう無理なのかもな…」 

高村が周りを確認していた理由がようやく分かった気がした。 
高村は女性を見ていたわけじゃない、女の怨念がいないかを見ていたんだ。 

俺は空元気を出し高村を励まそうとした。 
「大丈夫だって、話も眉唾だし、由美さんが亡くなって落ち込んでるのが原因なのかもしれないしな?それにさ、もし何かあったらその拝み屋に頼めばいいじゃん」 

高村は更に俯きながら呟いた。 
「拝み屋は死んだよ、心不全だった、隣に住んでた女子大生も死んだ、それも心不全だ、そんな偶然あるか?」 

俺は何も言えなくなり、それから一言も話す事も出来ず居酒屋を後にした。 

そして高村と会ったはその日が最後になった。 

冒頭で述べたが「心霊は根源的な恐怖、人間は狂気的な恐怖」そう言ったが間違いだったのかもしれない。 
心霊も元が人間である以上、本当の根源的な恐怖は人間の狂気なのかもしれない。 
そして俺は一人の男性の為にここまでの事が出来、遠い先にまで恐怖を残す、俺は人間の持つ狂気に心底恐怖した。 

正直この話が真実かは分からない、かなりうろ覚え部分もあるし、最愛の人を亡くした高村がノイローゼになっただけかもしれない。 
だが俺は確かに聞いた…丁度高村が失踪する前日に 
高村からかかって来た電話の先で高村の怯える声に混じり、狂ったように笑う女の声を… 

高村は行方は現在も判明しないままとなっている…