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 昔、頻繁に遊びに行く祖母の家にはフランス人形の写真が飾ってあった 
その人形の写真だけど、とても気持ち悪いもので、出来るだけその部屋には居たくなかった 
しかし寝る部屋はそこしかなく、父(離婚して実家にいた)と一緒に夜はその部屋に寝かされていた 
ある日父は仕事で帰ってこれず、自分一人で寝る事になったのだが、とても怖くて眠れなかった 

夜中過ぎてようやく眠気が訪れた頃、がしゃがしゃという音が庭先から聞こえた 
段々と近づいてくる金属音は明らかに人間じゃないと思えた 
寝ている部屋は庭先からは温室、小さな部屋と通らなくてはならない 
 
なのにガラス戸を開ける音も、障子を開ける音もなく近づいてくる金属音 
鎧だと気づいたのは寝ている部屋の障子に透けて映る武士みたいな姿が見えてから 
今ならわかるが、あれは大鎧、鎌倉や室町時代の古い鎧だった 
クリスマスが近かったので、祖父が茶目っ気効かせて鎧着たとか思ったのもほんの数分だった 
近づいてきた鎧は障子の前で刀を抜くと、やたらと振り回す 
もう怖くてガクガクしていたときに、頭上で何かが動く気配がした 

甲高い女の子が怒鳴るような声が次いで聞こえ、咄嗟にフランス人形の写真を見た……見たけど、そこには何もいなかった 
え?と思った時には低い男の声(古めかしい日本語)と女の子(多分フランス語だと……わからないけど)が怒鳴りあう声が 
障子をみると鎧が後ろ向きに倒されてジタバタする影と、それに乗っかる小さな女の子の影が見えた 
そこで記憶は途切れ、起きたら朝だった 

夢かと写真を見上げれば、何故か写真の人形の身体あたりににシワが入っていた 
庭に通じる部屋に向かうと、泥がべったり庭先から続いていた 
急いで祖父母に報告するが、オカルト嫌いな二人には沢山いる猫が泥を持ってきたと結論つけられた 
確かに二十匹ほど、窓開けて猫を出入りさせている家だったけど猫はあんなに足跡大きくない 

しかも猫は温室と自分が寝ている部屋には絶対に入ってこなかった、二十匹もいたのに 
何があったかわからないが、とりあえず鎧武者は出なくなったが、そのあともフランス人形は相変わらず怖くて、何度か恐怖体験の原因となった