KAI427015_TP_V

小学校の時,生徒や同僚の先生に大人気の女の先生がいた。 
俺が4年生の時に,赴任してきた新卒の先生で 
雰囲気が女優の堀北真希にどことなく似ていた。 
美人でとにかく振る舞いが魅力的,優しくて聡明, 
知識も豊富で,頭の回転が物凄く速い。 
弁がたち,保護者の方々からの信頼もばっちり得ていた。 
その先生は,当時の友達みんなが憧れていた。 
 
俺も先生として凄い人だと感じ,まあ尊敬はしていたのだけど 
なぜかみんなの様に「好き」にはなれなかった。 

その女の先生とある程度親しくなった頃から, 
彼女が登場する夢を,年に数回見るようになった。 
何もない真っ黒な空間を照らすわずかな光があり, 
それを目指し一人で歩き続けた先に,先生が笑顔で手を差し伸べて待っている。 
闇と孤独への不安から解放され,ほっとしてその手を掴もうとすると, 
彼女はその空間と同じ真っ黒な色の目をした人形の姿で, 
ただそこで不気味に笑っているだけ。 
俺はその黒さに吸い込まれるような感覚に陥り,いつもそこで夢から覚めた。 

結局,俺は卒業まで,その先生が受け持つクラスで過ごした。 
彼女は最後まで,俺たちにとって有能で優しい

だった。 
生徒たちはみんな,先生との別れを惜しんで涙を流し,先生もまた涙していた。 
ただ俺はどうしても,6年生の夏,ある出来事がきっかけで, 
最後まで先生への違和感を拭い去れなかった。 
3年間,ずっと素晴らしい先生だった彼女が, 
ほんの一瞬だけ,不可解な姿を見せたことがあった。