小学校の時,生徒や同僚の先生に大人気の女の先生がいた。
俺が4年生の時に,赴任してきた新卒の先生で
雰囲気が女優の堀北真希にどことなく似ていた。
美人でとにかく振る舞いが魅力的,優しくて聡明,
知識も豊富で,頭の回転が物凄く速い。
弁がたち,保護者の方々からの信頼もばっちり得ていた。
その先生は,当時の友達みんなが憧れていた。
俺も先生として凄い人だと感じ,まあ尊敬はしていたのだけど
なぜかみんなの様に「好き」にはなれなかった。
その女の先生とある程度親しくなった頃から,
彼女が登場する夢を,年に数回見るようになった。
何もない真っ黒な空間を照らすわずかな光があり,
それを目指し一人で歩き続けた先に,先生が笑顔で手を差し伸べて待っている。
闇と孤独への不安から解放され,ほっとしてその手を掴もうとすると,
彼女はその空間と同じ真っ黒な色の目をした人形の姿で,
ただそこで不気味に笑っているだけ。
俺はその黒さに吸い込まれるような感覚に陥り,いつもそこで夢から覚めた。
結局,俺は卒業まで,その先生が受け持つクラスで過ごした。
彼女は最後まで,俺たちにとって有能で優しい
だった。
生徒たちはみんな,先生との別れを惜しんで涙を流し,先生もまた涙していた。
ただ俺はどうしても,6年生の夏,ある出来事がきっかけで,
最後まで先生への違和感を拭い去れなかった。
3年間,ずっと素晴らしい先生だった彼女が,
ほんの一瞬だけ,不可解な姿を見せたことがあった。
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