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497 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2012/06/07(木) 17:52:24.98 ID:HSLKAHpZ0 [4/6回(PC)]
それから1週間後、学校の始まる3日前に引っ越しました。荷物は布団や小型冷蔵庫など最小限で、さほど時間は 
かかりませんでした。その時は私の母も一緒でしたが、大家さん夫妻は満面の笑みで出迎えてくれ「何か不都合な 
ことがあったらいつでも言ってきなさい」「これはこの地方でとれる蕗の煮物だよ」と奥さんからはお料理まで 
いただきました。冷蔵庫の中身はまだ買っていなかったのでありがたく思いました。母は翌日も仕事があるため 
すぐに帰り、スーパーなども近くにあったのでとりあえず買い物をして荷物の整理をしているうちに早くも日暮れと 
なりました。その日は疲れていたのでスーパーで買った出来合いのお総菜といただいた蕗の煮付けを食べて早く寝ようと 
思いました。その蕗の煮物を一口食べて奇妙な味がするのに気がつきました。不味いというわけではないのですが 
不思議な香りがするのです。西洋ハーブのアニスによく似ています。この地方特有の味付けかと考え、せっかくの 
ご厚意にこたえないのも失礼と思って全部食べてしまいました。 

布団を敷いて横になるとすぐに眠ってしまいました。そして奇妙な夢を見ました。それは大広間のような和室に 
大勢の人が集まりみな喪服を着ています。どこか田舎の大家のお葬式のようです。そうしてそこに次の間から自分が 
和服の花嫁衣装を着て入っていくのです。すると両脇から大家さん夫妻がやはり喪装で、昼に見たような満面の笑みを 
浮かべて私を迎え、手を取って上座の席に連れて行きます。隣の花婿の席は空いています。やがて一同は両脇に 
分かれて座ります。そして一斉に拍手をします。すると正面のふすまが開き、紋付袴の花婿らしき人が入ってきます。 
その顔はわかりません。なぜなら黒い頭巾で頭部全体を覆っているからです。花婿が私の横の席にすわります。すると 
獣臭さがわっと襲いかかるように鼻につきます。花婿が私の手をとります。お婿さんの手には茶色いごわごわした毛が 
生えています。そうしてもう一方の手で自分の黒い頭巾を上に引っ張ります。紋付の肩に茶色い毛の束が広がります。 
頭巾をすっかりとってしまうと、そこにあるのは何とも種類の判別しない動物の頭です。しかも両目がありません。 
私は絶叫しました。


498 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2012/06/07(木) 17:52:53.73 ID:HSLKAHpZ0 [5/6回(PC)]
そして目が覚めました。枕元の時計を見るとまだ2時過ぎです。とりあえず夢とわかってほっとしたところでしたが、 
すぐに部屋の中が夢と同じに獣臭いことに気がつきました。何かがいる気配がします。それも一匹や二匹ではありません。 
大きなもの、小さなもの、羽ばたくもの、這うもの、あらゆる獣が私の布団を取り囲んでいます。少しでも動けば 
襲いかかってきそうに思えます。部屋の中は真っ暗ではありません。電気製品や時計のわずかな灯りで見た目には何も 
いないのです。それでも尋常ではない殺気のために身動き一つできません。そうして何時間が過ぎたでしょうか。カーテン 
ごしに朝日が当たっているのがわかります。すると一つまた一つと小さなうなり声を残して、それらの獣の気配は部屋の 
南側、押し入れのあるほうに吸い込まれるように消えて行ったのです。 

どれくらい布団をかぶっていたでしょうか。光が差し込んだ部屋の中はすっかり朝の雰囲気となり、昨夜のことはどこまでが 
夢でどこまでが事実だったのかわからないような心持ちになりました。おそるおそる時計を見るとまだ6時半を過ぎたばかりです。 
私は起き上がり、昨夜の獣たちが消えて行った押し入れの前にいき戸を開けました。そこには昨日私が入れた段ボール箱とわずかの 
寝具があるだけでしたが、突き当たりの板を押してみるとなんだかごわごわします。後ろになにか柔らかいものがあってそれに板が 
当たっているような感触なのです。そこで押すのをやめ、てのひら全体をあてて横にずらそうと試みました。するとそれほどの力では 
ないのに板が大きく動きました。・・・そこに見たものは十数体の動物たちの剥製でした。毛のある生き物ばかりではありません。 
私は夢の中のように大きく悲鳴をあげて、パジャマのまま部屋の外に飛び出しました。 
離れの外に出ると、少し離れたところに大家さん夫妻が立っていました。夢で見たとおりの喪服姿でした。ご主人が口を開き 
「あなたなら息子の嫁にふさわしいかと思ったのに残念だ・・・。」奥さんが「杯を交わすまであと少しだったのに・・・」 
さも心惜しそうにつけ加えます。私はそのまま家の門を走り抜け大通りに出ました。そしてその日一日を大勢の人に紛れて駅で 
過ごしたのです。 



499 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2012/06/07(木) 17:53:09.82 ID:HSLKAHpZ0 [6/6回(PC)]
それからしばらくたって、荷物などは男性の友人に無理に頼んで取りに行ってもらいました。その人の話では、離れは取り壊されて 
すでになく、母屋も引っ越しをしたらしく中はがらんとした状態で私の荷物だけがそっくり玄関先にまとめられていたということ 
です。あれからずいぶん立ちますが、今でもあの押し入れの奥でちらと見たもののことを思い出します。たくさんの剥製に 
囲まれるように紋付袴姿の男性がひっそりと佇んでいた気がするのです。 



500 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2012/06/08(金) 14:15:50.33 ID:1dDN13jx0 [1/1回(PC)]
なかなか興味深い話でした。杯を交わしていたらどうなってしまったんでしょうかね。 
それとも変な味のする蕗の煮付も薬物でも入っていたんですかね。いやーこの手の話は大好きです。 



501 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2012/06/08(金) 16:15:23.42 ID:/EpWxINq0 [1/1回(PC)]
アニスつーのは映画の「ローズマリーの赤ちゃん」で悪魔の下僕たちが使ってたやつだろ



502 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2012/06/08(金) 17:06:16.34 ID:IUj7zX7SO [1/1回(携帯)]
市販の野菜は好きでよく食うけど、自生山菜を食うのは怖いな 
韮と水仙を間違えて食って中毒死する人も居るしな 
蕗じゃなくて、「毒性を持つ良く似た何か」だったから味が変だったのかもしれん 
睡眠薬か何かを盛られてたのかもだが