ある山中にダム湖があって、そこまで舗装道路が続いている。
その先にも県境になっている山を越える道路はあったが、路面状態がよくなく、交通は少ない。
僕は友人と二人、バイクで峠を越えるつもりであったが、その日は通行止めになっていたため、ダム湖のほとりで野宿をすることに決めた。
239 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2012/02/22(水) 17:02:24.77 ID:+xdZHQiG0 [2/9回(PC)]
それは何時くらいのことかよく覚えていないが、8時か9時でもかなり夜更けのように感じるものだから、まだ結構早い時間だったかもしれない。
5,60mほど向こうに、貸しボート屋の看板を掛けた三階立ての民宿があった。その前に軽トラックが停めてあるのだが、
その横に手をつないだ小さな子供と母親らしき人影が見えた。
騒いだつもりはないが、山中なので話し声が少しうるさかったかな?
と思い、友人に「近くに家があるから、少し声を抑えよう。」と言った。
240 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2012/02/22(水) 17:07:47.85 ID:+xdZHQiG0 [3/9回(PC)]
友人は、無人に見える電灯の灯らない民宿を見ながら
「人いますかね?」と答えた。
僕は、ほら、と言うように顎先を親子の人影に向けて目線を送った。
親子の人影はさっきよりも少しこちらに近づいているように見えた。
「何かいますか?」
友人には見えていない様子だった。
人影は、まさに、「影」という感じで、全体に輪郭もぼんやりしたものだし、濃淡のないものだった。
あ、これは違うな・・・
そう思って「いや、何でもない」といった。
人影は、また少し、こちらに近づいていた。
241 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2012/02/22(水) 17:15:05.63 ID:+xdZHQiG0 [4/9回(PC)]
「ひょっとして、怖い話しをしようとしてませんか?」
「そういう訳じゃないが、もしかして苦手な方か?」
「嫌いじゃないですが、あまり得意じゃないです。ここ、ちょっと怖い感じがしますよね。もしなにか出そうなときは言って下さいね。」
友人は恐がりな質らしく、些細なきっかけで怯え始めた。
僕は、いつもなら驚かせて楽しむ事が多いのだが、「引き返しましょう」と言われるのが面倒だったので人影についてはふれないでおいた。
そして、人影はまた少しこちらに近づいていた。
243 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2012/02/22(水) 17:24:09.02 ID:+xdZHQiG0 [5/9回(PC)]
少しずつ近づいてくる親子連れの人影を、さすがに僕も気にしていた。
面倒くさがらずに移動した方がいいかもしれない。
沸かしたばかりのお湯で作った紅茶をすすりながらちらちらと影を気にしていた。
不思議と恐怖はあまり感じなかった。何かの見間違いかもしれないとも思った。
だから、その時点では撤収は本当に面倒くさかった。
しかし、友人は一点を凝視し始めた。
「どうした?」
「いえ、○○さん(僕)がさっきから気にしてるのは、もしかしてあれかなと思いまして・・・」
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