785 : 遺跡(1/2)[sage] 投稿日:2011/12/20(火) 03:15:22.53 ID:1Ho/FhjA0 [1/1回(PC)]
大学時代の話だから、ざっと10年くらい前の話ね。 

夏休みが終わって、後期の授業が始まった辺り、学食で数人でダベっていたら、 
友人のAが「夏休みに、バイト先でちょっと恐い経験をしたんだけど……」なんて言い出した。 
彼のバイトは、大学の考古学専攻主催の遺跡発掘だったそうな。 

俺は、ちょっと遺跡とかに、興味があったから、すかさず「遺跡ってどこ?」と聞いてみた。 
すると、Aは「ん? ああ、銀座だよ」って、さも当たり前の様に答える。 
そして「遺跡っていうと、縄文時代とかイメージするだろ? けど、そういうのはごく一部。 
実際は江戸時代のものとかが多いんだ。それも東京ど真ん中に」なんて言う。 

江戸時代でも遺跡なのか……と妙に感心していたら、Aはやっと本題を切り出してきた。 

「それが、銀座にある江戸時代の墓場の発掘だったんだけど、昔は木の桶みたいのに死体を入れたりするだろ? 
そういうのが何個も出てきたんだけど、俺が見つけた桶の残骸の中に、ぽつんと黒いかたまりが入ってたんだ 」 

「黒いかたまり?」 
俺は聞き返す。 

「自分じゃ判断出来ないから、現場監督みたいな人を呼んで、『これなんスか?』って聞いてみたんだよ。 
で、何だったと思う?」 


786 : 遺跡(2/2)[sage] 投稿日:2011/12/20(火) 03:19:33.15 ID:a7LxPSuG0 [1/1回(PC)]
話をいきなり振られても答えられない。「いや、全然わからん 」 
すると、Aはニヤっと笑って「実はな、そのかたまり、人間の脳みそがミイラみたいになったヤツだったんだよ」 

「うへー、気味悪いな!」 
「だろ? けど一番怖かったのは、脳みそじゃないんだな」 

「と、いうと?」 
「いやな、その日の作業終了時に俺を呼んで、さっきの脳みそのミイラを持って来させたわけよ」 
「ふむ 」 
「で、普通のごみ袋にその脳みそを入れるように指示したのよ」 
「なに? ごみ袋に入れて持ち帰ったの?」 
「ハズレ。そのまま『これ、ごみ集積所に捨ててこい』だって」 
「え? 普通ごみ!?」 
「ああ、干からびてるけど脳みそだぜ? しかも発掘品。それを普通ごみにして捨てるんだよ」 
「まじかよ……」 

「俺は発掘品の脳みそのミイラを、普通のごみ集積所に出しちゃう、その慣習や神経が一番怖かったな」 

それから、友人はごみ集積所を見ると、「もしかしたら、近くで遺跡の発掘があって、 
ミイラがなに食わぬ顔で捨てられているかも……」 

なんて考えてしまって、気味悪かったそうだ。 
その話を聞いて以来、俺も街を歩いて、高く積まれたごみを見ると、ちょっと気味悪く感じるようになったんだ。