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45 : 金縛り1[] 投稿日:2011/08/11(木) 16:28:22.91 ID:L/lMZ3RX0 [1/6回(PC)] 
金縛りがつまらないと思う人は読まないでください。 
つまらない実話です。 

大学生の頃、とある複合施設で警備員のバイトをやった。 
守秘義務があるので名称は書けないが、そこで夜間働く者は 
ほぼ全員「出る」ことを知っていた。 
「出る」場所は警備員の仮眠室。 
当時のシフトでは深夜三人勤務で10時から1時、1時から4時、 
4時から7時までの仮眠時間があったが、1時から4時の時間帯に 
「出る」と言われていた。 

夜間のバイトを始めてすぐ、福隊長で元警官のNさんにそのことを説明された。 
「自分には見えないが、人によっては見えるらしい。一度御祓いをやった 
そうだが、人に害を与えるものじゃないそうだ。施設内はたまに不審者が 
入ってくるが、幽霊みたいなものよりそっちの方が怖いぞ」とのことだった。 


46 : 金縛り2[] 投稿日:2011/08/11(木) 16:30:51.18 ID:L/lMZ3RX0 [2/6回(PC)]

1時から4時に「出る」と教えてくれたのは、ビル管理会社の社員だった。 
「仮眠室が嫌だったら地下の機械室で休めばいい。霊感が強い人はみんな 
そうしてたよ。前の警備会社がそのことで揉めて、夜間は機械室を使う 
ようになったから。まあ音が煩いのと、空気が悪いのを我慢すれば、 
夏以外は過ごせるかな」と、もう諦めろという感じの口調だった。 

自分は霊感が全くないので「多分平気です」と答えたが、初日から仮眠室の 
様子は変だった。 
まず物音が多すぎる。誰かが自分の存在をアピールしているような感じ。 
それを無視してテレビを見ていると、勝手にチャンネルが変ったりする。 
部屋の明かりをつけっぱなしで横になると、畳の上を誰かが歩くような音が聞こえる。 

福隊長に言わせると「慣れればどうってことない」とのことだったが、バイトして二ヶ月、 
一度も仮眠はできなかった。 



47 : 金縛り3[] 投稿日:2011/08/11(木) 16:33:41.08 ID:L/lMZ3RX0 [3/6回(PC)]
シフトで一緒になるバイトの噂によると、仮眠室に出るのは 
「女か子供の霊」らしかった。うとうとしかけて金縛りに遭い、 
その時に姿が見えたり声が聞こえると皆口にしたが、こちらは 
一度も金縛りの経験がなく、それがどんな状態なのか想像も 
できなかった。 
親しくなった社員のOさんによれば「体は眠っているのに、 
脳だけが起きてしまう睡眠障害の一つ」らしかったが、それで 
パニックを起こすと幻覚や幻聴を体験するとのことだった。 

それでも「金縛りに遭った人が全員女と子供の姿を見た」ことの 
説明にはならないと反論する人もいて、そういう連中はほぼ 
「機械室休憩派」だった。 
仮眠室を使うのは福隊長と自分、福隊長補佐のOさんのみ。 

夏休みで半月間連続勤務することになったある日、Oさんから 
自分も金縛りに遭い「子供」の霊を見た。 
その子供が耳元で「何か」呟くが、その声を聞いてはいけと言われた。 



49 : 金縛り4[] 投稿日:2011/08/11(木) 16:37:20.50 ID:L/lMZ3RX0 [4/6回(PC)]
いったい何を呟いたのか訊ねると、「それが幻聴なんだよ。なぜ 
子供が幽霊になったか、自分が無意識に作り上げたストーリーを 
聞いているようなもんだ。そういうのを信じると、幻聴だけでは 
済まなくなるぞ」と言われた。 
そして本部(本社)からも、連続勤務して大丈夫か?これまで誰も 
経験したことないが、という問い合わせが福隊長にあったそうだ。 
「仮眠室では寝ないし、枕が変ると眠れないっす。ずっとテレビ見てれば、 
変な物音も気にならないっす」と返答した。 

そしてお盆休みに入る前日、二週間が何事もなく過ぎていた。 
ただ、夏休みに帰省した友人と連日昼間遊び、その日はあきらかに睡眠不足だった。 
勤務中に睡魔に襲われ、何度も顔を洗ったりしたが、いよいよ1時の休憩時間になった。 

機械室で仮眠を取ろうと思ったが、その夜はボイラーの修理作業で使えなかった。 
「一度くらい金縛りも経験しとくか」仮眠室の畳の上に大の字になった時、 
幽霊の怖さよりも、睡眠の欲求が勝っていたと思う。 



50 : 金縛り5[] 投稿日:2011/08/11(木) 16:39:25.95 ID:L/lMZ3RX0 [5/6回(PC)]

子供の声で目覚めた時、指先すら動かせなかった。 
仰向けになったまま、姿に見えない子供の声が耳元で大きくなっていく。 
「助けて、助けて」最初はそう囁いていたが、相手の方へ顔を向けよう 
として、徐々にその声が泣き声から叫び声に変っていった。 

「怖いよおおおおおー、助けてええええええー」鼓膜が破れんばかりの 
絶叫で気を失いそうになりながらも、必死に体を動かそうともがいていると、 
すっとその声が消えた。 
首が動いたと思った瞬間、寝ている自分の横でドサッと音がして、 
薄目を開けた女性の顔が目に入った。 

驚きのあまり悲鳴を漏らすと、ふいに体の自由が戻った。 
部屋の電気は煌々とついていたし、週刊誌やテレビのリモコンも目に入った。 
壁の時計を見ると二時四十分。 
自分でもよく分からないが、すぐにテレビをつけようと思った。 
枕もとのリモコンに手を伸ばしたが、黒いプラスチックの感触がなかった。 

おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、再び鼓動が速まり、突然目の前が 
真っ暗になった。 



51 : 金縛り6[] 投稿日:2011/08/11(木) 16:42:21.93 ID:L/lMZ3RX0 [6/6回(PC)]

そこで初めて金縛りが解けていないことに気づくと、 
今度は足元から荒い呼吸音のようなものが聞こえてきた。 
来るな、来るな、来るな、そう必死に念じながら、 
この場所で女と子供が殺されたんだと閃いた。 

じゃあ、誰が殺したんだ?そう思った瞬間、男の激しい吐息が 
聞こえてきた。それもまた近づいてくる。 
逃れようとして必死に体を動かそうとすると、まるで押さえ 
込まれるかのように、胸が激しく圧迫され、呼吸ができなくなった。 
おそらくそれで気を失ったのだろう。 

その後、Oさんの声で目が覚めた。体を起こそうとして、胸の辺りに 
鈍い痛みが走った。思わず顔をしかめると、Oさんは何かを知っている 
ような口ぶりで話しかけた。 
「肋骨の圧迫骨折か。ちょっとヒビが入った程度だけど、ここではもう 
働けないな。まあご苦労様だったね。シップすれば一月で痛みはなくなるよ」 

結局なぜその仮眠室に幽霊が出るかは分からなかった。 
ただ、その施設が建てられる前、そこに住宅があったということは確からしい。